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2007年06月25日(月) 02時51分

「運動会ピラミッドなぜ1番上でない?」、親のクレーム“暴走”に学校苦慮──教師、訴訟費用保険加入で自衛も日経新聞

 わが子の通う学校に理不尽な要求や抗議をする親が増えているという。「教師たちが疲弊している」との訴えで、弁護士に助言を仰ぐ制度を導入した教育委員会も登場。政府の教育再生会議の検討課題に加わった「学校受難」の解決の糸口を求め、模索が続く。

 大阪市内の公立小学校には、こんなクレームがついた。「運動会の組み立て体操のピラミッドでうちの子どもが1番上でないのはおかしい」。東京都内では「下校中の子供同士のけんかでけがをした。慰謝料を払え」と、親が血相を変えて学校に乗り込んだ。

 大阪大の小野田正利教授が関西の校長らを対象とした2005年の調査では、8割が「保護者からの無理な要求が増えている」と答えた。

 執拗(しつよう)なクレームの対応に振り回され、疲弊する教師らを放っておくわけにはいかない。東京・港区教委は6月、計5人の弁護士を相談役に据えた制度を導入した。弁護士同伴で乗り込んでくる親もおり、「法律のプロ相手にはプロで対抗するしかない」と話す。

 東京都内の教師らの“自衛策”は、福利厚生の一環で設けられている訴訟費用保険。4月時点の加入者は約2万1800人で、02年度の3.2倍。「校長中心だったが、一般教員が目立つ」(都福利厚生事業団)

 大阪府は03年以降、「子ども情報研究センター」を窓口に、親からの様々な相談を受け付けている。

 「話に耳を傾けているうちに落ち着く人も多い。むやみに口を挟まないことが、解決の近道」(相談員)と話すが、昨年の相談のうち、センターに来てもらって面談できたのは1割強の60件程度という。

 教育再生会議の提言では、臨床心理士や精神科医のほか、非行少年と向き合っている法務教官を活用して親の相談に当たらせることが盛り込まれた。保護者との意思疎通が問題の根本ではないか——との見方は少なくない。法政大学の尾木直樹教授(臨床教育学)は「学校側は自己解決能力を失わずにいるべきだ」と指摘する。



http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/40674.html