兵庫県豊岡市の女性(90)が、戦中から戦後にかけて会社勤めをした際に加入していた厚生年金を受給しようと、約30年前に豊岡社会保険事務所に申請したものの、「記録がない」と支給を拒まれ、昨年になって加入記録が見つかっていたことが分かった。
女性は最近5年分約150万円を受け取ったが、残る24年分約500万円は時効で受給できずにいる。女性は事務所に記録漏れを再三訴えたといい、社会保険庁関係者は、窓口の職員が必要な確認作業を怠ってきた可能性を指摘している。
女性の四男(58)によると、女性は1944年〜52年、鳥取市内の商社などに通算約5年勤務。60歳になった77年、同事務所で受給申請したものの、厚生年金の加入記録が見つからず、退職後に加入した国民年金しか受給できなかった。女性は2、3年ごとに窓口で再確認を求めたが、その都度「該当なし」とされた。昨年、四男が女性に代わって事務所を訪ねると、「鳥取社会保険事務所に確認する」と初めて言われ、約3週間後に記録があったと連絡が入った。
同庁によると、女性のように54年3月までに会社を辞めた人の厚生年金記録はコンピューターに入力されておらず、各事務所で手書き台帳をマイクロフィルムに収めて保存している。加入者から照会があった場合、コンピューターに記録がなければ手書き台帳を確認し、企業の所在地が管外なら当該事務所に照会することが「業務取扱要領」で定められている。同庁では「女性側の話が事実なら、職員が長年、ミスを重ねてきたことになる」とし、年金時効撤廃特例法案が成立すれば時効分が補償される可能性が高いとしている。
四男は「まさか国が間違うとは考えず、母の気が済むならと何度も一緒に事務所に足を運んだ。母を本気で信じていれば、厳しく確認を求め、早く記録を見つけることができたはず」と悔やんでいる。