2007年06月22日(金) 03時04分
<介護事故>ニチイ学館、報告せず…津の86歳骨折(毎日新聞)
訪問介護大手のニチイ学館(本社・東京都)が、三重県津市でヘルパーが起こした介護事故について、自治体への報告を怠っていたことが分かった。国は省令で、介護事故が発生した場合、事業者は速やかに自治体に報告しなければならないと定めているが、被害者の家族の問い合わせで事故を知った県が指導するまで報告書を提出していなかった。
三重県や同社によると、事故があったのは05年11月11日。津市に住む86歳の女性が「ニチイケアセンター津」でデイサービスを受け、帰宅の車に乗り込む際、ヘルパーに背中から押された。女性は腰椎(ようつい)圧迫骨折で入院し、全治2カ月と診断された。
省令を基に作成された同県マニュアルでは、事業者は介護事故があった場合▽応急措置後速やかに自治体に事故の発生を文書で報告▽さらに10日をめどに詳しい報告書を提出▽これを受けて県が事業者からの聞き取りなどを行う——と定められている。
しかし、12月になり家族が県に事故報告の有無を問い合わせたところ、報告されていないことが判明。同社は県の指導を受け、事故から1カ月半後の12月27日になって県に報告書を提出した。
女性の長女(59)は「母は骨粗しょう症なので注意してほしいと事業所には伝えていた。事故で寝たきりの状態になってしまった。私たちが県に問い合わせなければ、ニチイ学館は報告しなかったのではないか」と不信感を募らせている。
介護事故の報告件数を、国は把握していない。大阪府内の状況を独自に調査したことがある市民団体「福祉・介護オンブズネットおおさか」の日下部雅喜事務局長は「意思表示のできない高齢者もおり、報告されていない介護事故は一般にまだあるだろう。事故報告の義務があることも現場に浸透していないのではないか」と話している。
▽ニチイ学館広報室の話 事故はヘルパーのミスが原因で、心よりおわび申し上げたい。事故を隠すつもりは全くなかった。会社として、報告義務の周知が足りないところもあった。より一層、コンプライアンス(法令順守)を徹底したい。
【有田浩子、亀田早苗】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070622-00000009-mai-soci