2007年06月18日(月) 21時03分
暴かれた介護ビジネス ノルマ漬け、結局「利益第一」(産経新聞)
「セブンイレブンの店舗数を超えたい」。平成11年12月、東京・代々木で開かれたコムスンの全体会議で、当時社長だったグッドウィル・グループ(GWG)の折口雅博会長(46)は幹部社員ら300人に向かって気勢を上げた。12年4月から始まる介護保険制度の運用が約3カ月後に迫っていた。
会議の席上、出席者は知っている限りの全国の都市名を挙げさせられた。札幌、仙台、静岡、広島…。黒板は800を超える地名で埋まった。それを眺めていた折口会長が突然、「われわれは800センターを目指す」と切り出した。当初のセンターの開設目標は300カ所。この会議でその数は一気に拡大した。
折口会長は公の席で介護事業を語るとき、「信念」「社会貢献」という言葉をしきりに使う。だが、コムスンの元社員は「信念も、戦略もあったもんじゃない。ノリでしたね」と振り返る。
その1カ月後。六本木の居酒屋で、折口氏は側近たちを前に、さらに数字を積み重ねた。
「ライバルのニチイ学館も頑張っている。ウチも負けずにもっとつくろう。1が4つで1111カ所つくろう」
介護保険制度がスタートした12年4月。センター数は約半年前の約20カ所から、目標を上回る約1200カ所に膨れあがっていた。「看板だけで、ヘルパーがいないところもあった」(元社員)と打ち明けるが、それが急速な拡大路線の実態だった。
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「売り上げなくしてすべてなし」。折口氏は著作『「プロ経営者」の条件』の中でそう力説している。その“信念”は介護事業でも貫かれた。
月2回のセンター長会議では常に成績順に並ばされ、成績の悪いセンター長はみんなの目の前で叱責(しっせき)された。ケアプランを作るケアマネジャーは新規顧客の開拓、現場のヘルパーは訪問ルートごとの1日の売り上げ「ルート単価(ルー単)」のノルマが課せられた。
3年前まで東京都内で働いていた40代のヘルパーがいう。
「ルー単が1万7000〜1万8000円、1カ月の新規顧客開拓は4〜5人がノルマ。みんな苦労していた。まるでモノを売るような感覚。介護にはそぐわないと思った」
ルー単を達成するためには、なるべく単価の高い身体介護を組み込まなければならない。現場のヘルパーの多くが疲弊し、辞めていった。