2001年に破たんした抵当証券会社「大和都市管財」グループによる巨額詐欺事件に絡み、抵当証券購入者計721人が「近畿財務局は同社が破たん必至の状態にあることを認識しながら抵当証券業の登録を更新し、被害を拡大させた」として、国を相手に総額約40億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が6日、大阪地裁であった。
西川知一郎裁判長は「近畿財務局は注意義務を尽くさず、漫然と登録更新した」と国の過失を認め、原告のうち1998年1月以降の新規購入者260人に約6億7400万円の賠償を命じた。
財産上の損害が争われた消費者事件で国の責任を認め賠償を命じた判決は初めて。
抵当証券業規制法は、購入者保護を目的に登録業者に対し3年ごとの登録更新を定め、財務内容に問題があれば、「登録更新を拒否しなければならない」と規定している。裁判では、近畿財務局が1997年12月に行った大和都市管財の登録更新が適正だったかどうかが最大の争点になった。
西川裁判長は、近畿財務局が97年6月から行った同社への立ち入り検査などでグループ全体で約105億円の債務超過に陥っていたことを把握し、同社が関連会社への架空融資で資産を水増ししていたことをうかがわせる資料も入手していたと指摘。
登録更新の際には「同社の破たんが差し迫っていたことを容易に認識でき、登録更新を拒否すべき理由があったのに、特段の調査をすることなく、漫然と登録を更新した」と、監督官庁としての怠慢を認めた。
原告は、東京、大阪、名古屋の各被害者弁護団と委任契約を結んだ全国の被害者5743人のうち、98年1月以降に抵当証券を購入した721人。このうち97年12月の登録更新以前から抵当証券を購入し、償還金を受けていた被害者を除く260人について損害を認めたうえで、「原告もリスクを知り得た」と過失相殺で損害の6割を減額した。
国側は「登録更新時、大和都市管財本体は債務超過ではなかった。関連会社について検査権限がなく詳細な経営状態は把握できなかった」などとしていた。
大和都市管財は1985年ごろから抵当証券の販売を始め、約10の関連会社とともにそれ以外の金融商品も次々と手がけた。2001年4月、近畿財務局が大和都市管財について債務超過と判断、抵当証券業の登録更新を拒否し、経営破たん。大阪府警も捜査に乗り出し、同年11月、詐欺容疑で豊永浩元社長(70)らを逮捕。06年9月、最高裁で豊永元社長は懲役12年の実刑が確定した。被害は約1万7000人、総額約1100億円に上り、豊田商事事件に次ぐ規模となった。