投資家「やめろ」 「手法をまねされる」
インターネット専業証券大手の松井証券が5月30日に発表した一橋大大学院との共同研究を巡って、顧客から数百件の苦情などが寄せられていることが4日、明らかになった。顧客の株式売買履歴を研究チームに提供し、投資行動に関する基礎研究に役立てるとする計画に対して、顧客から「取引履歴は顧客の財産で、外部提供はおかしい」などの反発が出ている。松井証券は4日、読売新聞の取材に対し、「結果的に顧客への説明が足りなかった」と不手際を認めた。しかし、研究は予定通り行うとしている。取引口座解約の動きも一部に出ており、証券会社が持つ個人情報保護のあり方で論議を呼びそうだ。
松井証券は、氏名など個人を特定できる情報は出さず、データ提供を拒否する人は6月5日までにメールや電話で連絡するようホームページで呼びかけた。しかし、周知期間が短すぎるとの声もあり、拒否の期限を今月末に延長するなど、対応に追われている。
松井証券と共同研究するのは、一橋大大学院の三隅隆司教授(金融システム論)の研究グループ。松井証券が顧客の個人投資家の年齢、職業、市や区などおおまかな住所、過去に取引した銘柄や運用成績などの株式売買データを研究グループに提供する。データをもとに投資家行動による市場価格の動きなどを分析し、成果を顧客サービスの向上につなげる目的という。
松井証券は30日に顧客専用ホームページで、口座を開設している約68万人の全顧客に計画を表明した。
これに対して顧客から、「苦労して確立した投資手法を外部に漏らすのはおかしい。自分の投資手法をまねされる」などの反発が出ている。数百件の苦情などのうち十数件は口座解約の意思を示しているという。松井証券は「氏名など個人を特定するデータは提供せず、拒否する顧客は対象外とする。個人情報保護法にも抵触しない」と理解を求め、今のところデータ提供と研究は計画通り実施する方針としている。