東京都港区の区民向け住宅「シティハイツ竹芝」で昨年6月3日、「シンドラーエレベータ」社製のエレベーターに挟まれて死亡した都立小山台高2年・市川大輔さん(16)の両親が2日夜、事故から1年を前に記者会見し、「このままでは失われた子どもの命が無駄になってしまう」と原因の徹底究明を訴えた。
命日の3日には、大輔さんが所属した同校野球部の仲間たちとともに、冥福(めいふく)を祈るという。
「亡くなったとは思いたくないのが家族の気持ち。そんな私たちを支えてきたのは、事故原因の徹底究明を訴えることでした」
同住宅の集会場で記者会見した父親の和民さん(53)と母親の正子さん(55)は淡々と語りながら、安全なはずのエレベーターで、なぜ最愛の息子の命が奪われたのか、その答えを求め続けた1年間を振り返った。
正子さんらは、警視庁や国土交通省、日本エレベータ協会などに次々と足を運び、原因究明と再発防止を要請した。今年1月に訪問した滋賀県内のエレベーター会社で、ブレーキを二重構造にしたエレベーターを見て、「これがあれば二度と事故は起きないのでは」との思いも強くした。先月には東京地検の検事にも会い、「製造元も含めた刑事責任の追及を」とも要望した。
しかし、いまだに真相はわからない。「この1年で分かったことを子どもに報告したかった……」
正子さんは会見の間、終始、残念そうな表情だったが、今春、小山台高校が出場した都大会の試合を観戦したことを明かし、「野球の応援をしていた時、大輔のことを一番思い出しました」と声を絞り出すように話した。
現在もエレベーターには不信感があり、12階まで非常階段を使っている。「原因がわからない限り、失われた子どもの命が無駄になってしまう」と正子さんは語気を強めた。