都市再生機構が所有する東京都杉並区の賃貸マンション(14階建て)で3月下旬、シンドラーエレベータ(江東区)社製のエレベーターのかごをつるす3本のワイヤロープのうち、1本を構成する束の一部が破断していたことが23日、わかった。
同社は、昨年6月の死亡事故直後の定期検査で「問題なし」と都に報告していた。国土交通省では、「ずさんな検査で劣化を見落としていた可能性が高い」として、同社が保守点検する約7000基について緊急点検を行うよう、都道府県などに通知する。
このマンションは、「プロムナード荻窪2号棟」。国交省などによると、3月25日夜、住民から、「異常音がする」との連絡がシンドラー社に入った。ワイヤロープは、それぞれが8本の鉄線の束からなるが、このうち1本の束が完全に破断していた。
同社は都市再生機構に報告し、同月31日にロープを交換するとともに、4月18日に事故報告書を同機構に提出したが、同機構は今月22日まで、都や国交省に報告していなかった。
日本工業規格(JIS)の検査基準では、ワイヤロープについて、摩耗した部分でも通常の90%以上の太さを求めており、今回のような束の破断はJIS基準に反しているという。
このエレベーターは一昨年8月から運転を開始。同機構では「確認が不十分で、束の破断だと認識していなかった」と説明しており、他のエレベーターの事故報告書を再点検する。
シンドラー社は「破断の原因がはっきりせず、現段階でコメントは控えたい」としている。