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2007年05月23日(水) 12時02分

節電器損賠訴訟:和解、実質的な「返金」 解決金「責任、法で規定を」 /宮城毎日新聞

 ◇信販会社解決金
 仙台地裁で21日、和解が成立した節電器販売会社「アイディック」に関する訴訟。信販会社「クオーク」(本社・東京)から支払われる約8430万円の解決金について、提訴した自営業者らの弁護団は、事実上の「既払い金返金」と受け取る。これまで、悪質商法の被害救済のカギとされ、国で検討中の割賦販売法改正でも焦点とされる分野だ。
 悪質商法を巡っては、業者が販売した商品に消費者が信販会社と高額のクレジット契約を結ばされ、業者が破たんしたり摘発されても信販会社への支払い債務が残るという構造がある。詐欺商法被害に詳しい宇都宮健児弁護士は「悪徳商法を社会的に容認しているのが信販会社の存在」と厳しく指摘する。
 05年に社会問題となった悪質リフォーム詐欺では、5000万円ものクレジット契約を結び、支払えなくなった認知症の姉妹の自宅が信販会社によって競売にかけられそうになる事態に発展した。顧客の支払い能力を上回る契約を結ばせる過剰与信が問題化。契約業者の商法が適切かを確認すべき責務があると指摘する声も高まった。経済産業省は今年2月、関連する割賦販売法の改正方針を決定。産業構造審議会の分科会では、信販会社に対する、契約業者の悪質性調査や既払い金返還の義務化などが焦点となった。
 宇都宮弁護士によると、既払い金返還はこれまで、被害者への返還を条件に破産管財人が信販会社に資産譲渡し、全国の約9800人に既払い金の45%が返還された「ココ山岡」のケースのみ。実質的には今回が初めてという。
 今回の訴訟で中心的役割を果たした鈴木裕美弁護団代表は「額の多寡や支払い名目より『実質的な返金に応じさせた』意義は大きい」と指摘。弁護団は「悪質商法被害者のほとんどは泣き寝入りを余儀なくされている。予防救済には加盟店と信販会社の共同責任規定が欠かせない」と早期の法改正を求める声明を発表した。
 宇都宮弁護士は「信販会社は社会的責任の大きさを自覚すべきだ。貸金業者へは取り立てや貸し付けの総額制限など規制が強まったが、クレジットには罰則規定がない。経済産業省はもっと積極的に指導し、法整備を進めるべきだ」と指摘している。【藤田祐子、伊藤絵理子】

5月23日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070523-00000082-mailo-l04