2007年05月17日(木) 03時08分
<住民情報>大量流出…委託元社員から 西日本3市1町(毎日新聞)
山口市と長崎県対馬市、愛媛県愛南(あいなん)町の業務を請け負っていた山口市の情報処理会社の元社員のパソコンから、ファイル交換ソフト「ウィニー」を通じ、住民の個人情報がインターネット上に流出していたことが分かった。愛南町から流出した約4万2000件の中には「住民票コード」との表記もあった。本物ならば、全国初の事態で、住民のプライバシーが大きく損なわれる。
福岡県嘉麻(かま)市でも別の情報通信会社社員のパソコンから同様に流出した。山口市では、合併前の旧秋穂町の住民計約7000人分の課税業務用の氏名、住所、納税額、金融機関の口座番号などが流出。対馬市では1132人分、愛南町は住民基本台帳情報など少なくとも約4万2000件の情報が漏れた。
元社員はデータの入った記憶媒体を持ち帰り、自宅パソコンで整理した際、ウィニーに感染した。記憶媒体には計6〜7自治体の情報が入っていたとされ、他に流出がないか会社側が調べている。対馬市、愛南町とも元請け会社から下請け会社にデータを移すことを禁じていたにもかかわらず、流出させた元社員の会社は下請けだった。元請け会社の行政処分も検討している。
一方、嘉麻市では合併前の旧山田市が保有していた軽自動車税の課税データ約2万8000件が流出。うち14件10人分は住所、氏名、生年月日、車体番号なども含まれていた。市町合併に伴うシステム統合の作業を請け負っていた「麻生情報システム」(福岡市)の社員がデータを扱った個人パソコンがウイルス感染していた。
総務省によると、今年度に入ってから、ウィニーなどで住民情報を流出させた自治体には、大阪府岸和田市、大分県日田市がある。
◇住民基本台帳情報 住民基本台帳には、氏名、住所、生年月日、性別のほか国民全員に割り当てられた11けたの住民票コードが記載されている。プライバシー保護の高まりを受け、06年11月から原則として閲覧できなくなった。
◇解説…情報管理も自治体格差
西日本の地方自治体が保有する住民情報がファイル交換ソフト「ウィニー」を通じてインターネット上に相次いで流出した問題は、財政や人的な格差が自治体間にある中で、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)など、全国同一の安全水準を維持してネットワークで結ぶ電子自治体化の難しさを改めて浮き彫りにした。
今回、住民情報の流出が発覚した愛南町は人口約2万7000人の小規模自治体。同町は契約が適正に履行されていなかったことについて「チェックができていなかった」(総務課)と甘さを認める。
住基ネット導入の際に総務省は技術的な安全性を強調していた。セキュリティー問題に詳しい園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法、情報法)は「より課題の多い人的な問題による流出を十分検証してこなかったツケが回ってきた」と指摘する。
今年度に入り、自治体からネットへの流出が相次いで明らかになった。同省は政策の見直しを迫られそうだ。【臺宏士】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070517-00000021-mai-soci