はちみつ商品に関する適正表示を推進する社団法人「全国はちみつ公正取引協議会」(東京都中央区)の定期検査で、規約に反して人工甘味料などの混入が疑われる商品が、過去7年間で延べ120点、検査対象の約2割に上っていたことが、読売新聞の入手した資料でわかった。
いずれも「純粋はちみつ」のラベルを付けており、「偽はちみつ」が出回っている可能性がある。同協議会は、各業者に注意や警告しただけで十分な調査をせず、検査結果も公表していない。公正取引委員会では問題を重視し、調査に乗り出した。
同協議会は景品表示法に基づき、公取委の認可を受け設立された公的機関。年1回の定期検査では、会員業者が扱う商品から100点前後を選び、専門の分析機関に依頼して成分鑑定などを実施している。
混入の疑いは、異性化糖(でんぷんなどを原料とする人工甘味料)と、水あめ類の含有を調べる検査で浮上した。2000〜06年度の検査対象は延べ610点で、他の成分の混入を示す陽性となったのは、異性化糖の検査では同100点、水あめ類の検査で同20点だった。
はちみつは日本農林規格(JAS)による基準がないため、同協議会が公正競争規約に定める基準が、国内唯一の指標となる。それによると、はちみつは「みつばちが花みつを採集し、巣に貯(たくわ)え熟成した天然の甘味物質」で、異性化糖や水あめなどの混入商品は「純粋はちみつ」とは表示できない。
昨年10月には農林水産省の調査で、当時、同協議会の会員だった都内の業者が、コストダウンのため、2割もの異性化糖で水増しした商品を「純粋はちみつ」として販売していたことが発覚、不適正な表示だとしてJAS法違反で改善指示を受けた。この業者の場合、同協議会の定期検査でも異性化糖が検出されたことがある。
同協議会では陽性反応が出た場合、業者に注意文書を送り、2〜3回目になると警告している。規約では、違反者には事情聴取など必要な調査を行い、警告した時は文書で公取委に報告すると定めているにもかかわらず、同協議会は事情聴取を怠り、公取委への報告を一度も行っていなかった。7年間の全検査では延べ21業者に警告し、同141業者が注意とされたが、いずれも個別の業者名は公表されていない。
同協議会は「同業者間では踏み込んだ調査がしにくく、人員が限られていることもあり、手続きを怠ってしまった」と説明する。
NPO法人「食品と暮らしの安全基金」の小若順一代表は、「検査の結果は消費者にも広く公開すべきだ。協議会は形骸(けいがい)化しているのではないか。真のチェック機関をつくることが必要だ」と指摘している。