日本のBSE(牛海綿状脳症)検査の基準が、変更される可能性が出てきた。
3年半前、BSEに感染していることが判明した月齢23か月と21か月の若い牛について調べたところ、ほかの動物への感染性が、ほぼないことがわかったためだ。
厚生労働省の研究班が、この2頭の脳液を生きたマウスの脳に注射しても、マウスは感染しなかったという。
日本でBSEへの感染が確認された牛の中で、この2頭が一番若齢だった。このため政府は、月齢21か月以上の牛は安全が保証できず、食べた人にも感染する恐れがあるとして、食肉処理場から出荷する際に、検査の対象とする措置を取ってきた。
しかし、この2頭の危険性が否定されれば、検査を月齢21か月以上としている根拠が失われることになる。
もともと、国際的な検査対象の月齢は30か月以上だ。厚労省の調査が確定し次第、日本も検査月齢を国際基準に変更する手続きに入るべきであろう。
BSEへの感染が確認された牛の月齢は、世界的にも3歳以上がほとんどだ。日本のこの2頭が異例だった。
異常プリオンの量も、ほかの感染牛の500分の1から1000分の1と微量で、「これでBSE感染牛といえるのか」と指摘する声が当時からあった。今回の調査は、そうした見方を一部、裏付けるものと言える。
米国産牛肉の輸入条件は、国内産牛肉の検査基準に準じている。このため、日本が国内の基準を変更すれば、輸入条件の緩和も日程に上りそうだ。
現在、月齢20か月以下で、脳や脊髄(せきずい)といった危険部位をすべて取り除くことを条件にしている。
この厳しい条件のため、米国産牛肉の輸入は低迷している。2003年12月にBSE感染牛が米国で初めて確認され、日本は輸入を禁止した。昨年7月に本格的に解禁したが、輸入量は以前の10分の1程度に過ぎない。
米国はこれに不満で、条件緩和を強く要求し、日米間の火種になっている。
家畜の国際的な安全基準を決める国際獣疫事務局(OIE)は、近く米国を、月齢に関係なく牛肉を輸出できる「準安全国」に認定する見通しだ。そうなれば日本が付けている条件は、国際的に説明がつかないもの、と言われかねない。
世界貿易機関(WTO)でも、国際水準を超える独自の安全基準による輸入制限は、違反と認定される恐れがある。世界の常識に従って、日本も国際基準に合わせるべきではないか。