安倍首相が4月21〜23日に行われた靖国神社の春季例大祭で、神前にささげる供え物を「内閣総理大臣」の肩書で奉納していたことが分かった。首相による奉納は中曽根元首相以来約20年ぶり。安倍首相は靖国参拝について「したか、しないか、申し上げるつもりはない」とあいまいな態度をとっているが、参列の代わりに供え物を奉納することで靖国神社への配慮を示したとみられる。
同神社関係者によると、奉納したのは「真榊(まさかき)」と呼ばれる、神事に使うサカキの鉢植え1基。高さ2メートル近くあり、本殿に上がる木製階段の両脇にほかの真榊とともに並べられた。鉢に付けられた木札には「内閣総理大臣」と書かれた。
例年、衆院議長をはじめ、日本遺族会や英霊にこたえる会の会長らも真榊を奉納しているが、首相は、85年に靖国参拝が問題化した中曽根氏(在任期間82〜87年)の後は途絶えていた。小泉前首相は例大祭ではなく、自らが参拝した際に花を供えた。
神社側が安倍首相側に参列の案内を送り、奉納を働きかけたところ、首相側が応じたという。奉納の費用は5万円という。
靖国神社は招待者を対象に、毎年4月に春季、10月に秋季の例大祭を行っており、神社の儀式としては8月15日の終戦の日よりも重要視されている。安倍首相は官房長官だった昨年4月、例大祭の直前にひそかに同神社を参拝したことが明らかになっている。今回の例大祭は、中国の温家宝(ウェン・チアパオ)首相の訪日直後の時期だった。
同神社関係者は「首相になり参拝を控える中、お気持ちを示されたのだと思う。ありがたい」と歓迎している。
安倍事務所は朝日新聞の取材に対し、「思想信条に関するご質問には回答しておりません」としている。供え物の費用が私費か公費かも回答はなかった。
http://www.asahi.com/politics/update/0508/TKY200705070346.html