悪質商法の業者に対し、経済産業省や都道府県が、ようやく厳しい処分を下し始めた。特定商取引法(特商法)に基づき業務停止命令や改善指示を下した件数は06年度に84件にのぼり、5年前の4倍に達する。だが、都道府県によって偏りが大きく、19府県はこれまで処分を出したことがない。
取り締まりの甘い地域を狙って全国を転々とする悪質業者があり、法律があっても執行がうまくいっていないことを浮き彫りにしている。
国民生活センターのデータをもとに経産省が集計したところ、全国の特商法関連のトラブル相談は、05年度には10年前の6倍を超える83万件に達している。
迷惑メールの相談が件数を押し上げているが、閉めきった会場に人を集めて商品を売る「催眠商法」、換気扇の点検と偽ってフィルターを売りつける「点検商法」なども後を絶たない。
旧訪問販売法時代の96年度から始まった処分の累計は、国が138件、都道府県が177件。
経産省は01年から対策を強化し、06年度の処分は30件。谷みどり消費者政策担当審議官は「都道府県も積極的に処分を出してほしい」と話す。
都道府県でいち早く警察OBなどの専従職員を配置するなどして、処分を積極的に行ってきたのは東京都と静岡県。累計で東京が61件と静岡が30件の処分を出した。
渋谷駅近くで「無料でネイルするよ」と10代の女性に声をかけ店に連れ込んで約30万円の化粧品を売りつけたケース。東京都は今年1月、業者に対して、3カ月の業務停止命令を出した。「戦友です」と言って高齢者宅を訪ねて昔話をした後、高額の書籍を売りつけた業者には静岡県が改善を指示した。いずれも販売目的を隠して勧誘したことなどが処分理由だ。
05年度に10府県、06年度に3県が初めて処分に踏み切り、25日には岡山県が初の改善指示を出した。しかし、依然として処分ゼロの「空白地域」が19府県ある。
茨城県は「必要な案件がなかった」としているが、県消費生活センターがあっせんに乗りだしても解決できなかったケースが05年度で37件ありトラブルは少なくない。
高知県は昨年度、3業者の情報を集めたが、証拠を固めきれず、処分できなかった。専従担当者はおらず、態勢強化のめどもたっていない。
全国消費者団体連絡会の調査では、消費者行政の担当職員は都道府県全体で1208人おり、4年前に比べ約8%減った。関連予算も3割強、削減された。都道府県の消費者行政は、全体としてはむしろ後退しているのが実情だ。
昨年11月、香川県が催眠商法の業者に四国初の行政処分となる3カ月の業務停止を命じた。高齢者にくじ引きを勧め、「当たりました」と販売会場に連れ込み、高額な布団を売りつけていた。
この業者は同じ手口で昨年3月に岩手県から改善指示を出され、香川に移っていた。香川の処分後は中国地方の「処分ゼロ」の県内で活動している。日本消費者協会の山田英郎参与は「取り締まりの甘い地域が悪質業者に狙われている」と警鐘を鳴らしている。
http://www.asahi.com/national/update/0428/TKY200704280252.html