日立製作所の工場で、派遣社員から契約社員に切り替えて直接雇った人の労務管理を、それまでと同じ派遣会社にほぼ丸投げしていたことが28日わかった。賃金など労働条件も同じまま、3月末で契約は打ち切られた。契約社員らは「実態は派遣と同じ。『偽装直接雇用』だ」と反発。派遣社員に直接雇用を申し込むことを企業に義務づけた労働者派遣法の規定が無意味になりかねないとして、法の不十分さを指摘する声も出ている。
契約社員らが2月につくった日立派遣ユニオンによると、同社の東京・青梅工場では05年6月、二つの派遣会社から計130人の派遣社員を受け入れ、うち110人を、法定の派遣期間がすぎる06年6月から契約社員に切り替えたという。
しかし、賃金も労働条件も派遣時代と同じで、タイムカードの管理や教育訓練などを、同じ派遣会社が業務委託の形で引き続き担当。派遣会社の寮に住み続け、寮費は日立が賃金から天引きして派遣会社に渡していた。派遣会社名で健康診断の結果通知を受け取った人もいたという。
ユニオンは「労務管理が派遣会社任せでは職場の改善要求もしにくい。正社員との待遇の差や立場の不安定さも変わらない」と反発。就職先のあっせんなどを求め、交渉を続けている。
日立側は「法に照らして適正にやっている。労働条件は転換時に説明したはず。委託しても最終責任は日立が持つので問題はない。契約打ち切りは4月以降の作業量見通しをふまえて決めた」と話す。
厚生労働省は「派遣法が規定するのは直接雇用を申し込む義務。契約社員にしたり労務管理を業務委託したりしても違法とはいえない」という。
派遣労働に詳しい中野麻美弁護士は「直接雇用なら実質的に雇用者としての役割を果たすことが必要だが、労務管理を派遣会社に委託すると、安全衛生の問題などに雇用者が対応できない恐れがある。こういうことを防げないのは法の不備だ。これが広がれば、直接雇用の申し込み義務に込められた、働き手の安全や安定をめざす趣旨が空洞化しかねない」と話す。
http://www.asahi.com/national/update/0429/TKY200704280255.html