【20%超の意味】
沈黙を貫いていた楽天・三木谷浩史社長(42)がとうとう動いた。
19日にTBS株を買い増しし、従来の19.07%から20%目前の19.86%まで持ち株比率の引き上げを実施。さらに、TBSに対して保有比率を20%超まで高め、持ち分法適用子会社にする意向を示す説明書を提出。また、6月のTBS株主総会で、社外取締役に三木谷社長とカルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭社長を選任することも提案したのだ。
証券アナリストは「楽天が、TBS株の保有比率を20%強まで引き上げるとしたのは賢明な判断」と指摘し、こう話す。
「これまで1000億円以上をかけてTBS株を取得しながら、1円の利益にもなっていない。20%以上を取得すれば持ち分法適用子会社となり、TBSの連結純利益の20%超を楽天の連結経常利益に加えられる」
楽天がTBSの利益を加えると、のれん代が発生して利益を押し下げる可能性もあるが、「それでも楽天の株主には、TBS株を保有する意味を説明しやすくなる」と先のアナリストは解説する。
【窮地】
対するTBSは「企業価値評価特別委員会」で、買収防衛策の発動の是非を協議するとみられる。楽天が「乱用的買収者」と認定された場合、株主総会で承認を得た上で、既存の株主全員に新株予約権を割り当て、楽天の動きを封じることになる。
しかし、市場や法曹関係者の間では「TBSは極めて不利」との見方が優勢だ。
「楽天は1年以上も事業提携を提案し続けてきた。短期的に株を買い占め高値で売り抜けるグリーンメーラーなら敵対的と判断されても仕方がないが、その期間の長さからして敵対的とは判断しにくい」と法曹関係者は明かす。市場関係者も「過半数を取得したのならまだしも、20%強を買い占めただけでは敵対的とは見なしづらい」とみる。
それでも同委員会が「乱用的」と判断すれば、楽天は判断の無効を求めて訴訟を起こし、司法に判断を委ねることになるが、「楽天側の勝利になる可能性の方が高い」(先の法曹関係者)という。
楽天があえて買収防衛策が発動される可能性のある株の買い増しをTBSに通告したのは、6月の株主総会前に発動の判断を司法に問い、「総会での否決を目指して議決権闘争を進めるねらいもある」(同)とみられる。
【不気味な存在】
こうした中、TBSにとって気になるのが靴販売大手「エービーシー・マート」の三木正浩会長の動向だ。三木会長が経営する不動産管理会社は1月10日時点で、TBS株を8.92%まで買い進めている。
仮に楽天と三木会長がタッグを組むと両者が保有するTBS株は30%弱まで高まる。
「買収者の持ち株比率が3分の1超となると経営の重要事項に否を唱えられる拒否権を持つことになる。楽天と三木会長だけでは3分の1超とはならないが、もう1人加われば可能性が高まるだけにTBSはますます窮地に陥る」(先の法曹関係者)
TBS株の大量保有について三木会長は「純投資」とし、楽天も無関係としているが、今後の展開次第では「両者の関係が変わってくる可能性もある」(市場関係者)との声も。
いずれにせよ、楽天VsTBSの戦いはますますヒートアップしていきそうだ。
ZAKZAK 2007/04/20