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2007年04月20日(金) 11時55分

「真珠投資」被害 宮城が突出読売新聞

大崎にキュート幹部

 愛媛県の真珠養殖販売会社「キュート」が全国の主婦らに真珠養殖事業への投資を持ちかけ、配当が滞っている問題で、宮城県内の被害が約500人、約10億円に上り、全国最多と突出している。県内で被害が拡大した背景には、同社の有力幹部が在住し、交友関係を利用するなど、投資経験の乏しい主婦らを巧みに勧誘していったことが指摘されている。(野島正徳)

 石巻市のホテルで2005年5月に開かれた「真珠投資説明会」。約4700万円を投資した50歳代の女性は、友人の主婦8人を誘った。

 「105万円の投資で100万円相当の真珠セットと、127万円が1年半後に戻る」「社長は人望があり、間違いはない」——。マニュアル化された説明だったが、約100人の参加者が熱心に聞き入る姿を見て、友人たちも投資を決意した。女性は「半ば洗脳された状態だった」と振り返る。

 仙台の被害対策弁護団によると、この女性を勧誘したのは「北海道・東北本部長」を名乗る、同社で“ナンバー3”の有力幹部。大崎市在住で、03年ごろから県内に協力者を募り、その交遊関係を利用して友人らを次々と手玉にとっていったという。ホテルなどの説明会のほか、真珠養殖の現地見学会も企画。投資者や、友人らも招待して誘い込んだ。

 キュートは、投資者にクレジット契約を勧めた。信販会社を通じて投資した金は、キュートから投資者の口座に振り込まれる返金や配当で返済され、差額が投資者のもうけとなる。元手がなくても資産を増やせるという一見、便利な仕組みだ。弁護団は、クレジット契約が被害を拡大させたと見る。

 県内では、別の主婦が8000万円を超える投資をしたケースもあった。弁護団は「クレジットのローン契約により、経済的な負担を感じないまま投資意識をあおられ、被害額が雪だるま式に膨らんだ」と指摘する。

 しかし、返金などは05年7月ごろから、一斉に滞り始めた。この主婦への返金も約1400万円にとどまり、手元には多額のローンと、1個あたり数万円の価値しかない真珠セット約80個が残った。

 全国の被害は39都道府県に及び、約2500人、約50億円に達する。各地の被害者からの刑事告訴を受け、愛媛、宮城など6県警は、合同捜査本部を設置。

 捜査本部は、17日、配当を約束して不特定多数から資金を集めた出資法違反(預かり金の禁止)の疑いで、キュート本社(愛媛県愛南町)や大崎市の有力幹部方など51か所を強制捜査した。詐欺容疑も視野に入れ、押収資料の分析や、関係者からの事情聴取を進めている。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyagi/news001.htm