東京女子医科大学病院(東京都新宿区)は18日、同病院で95〜04年に心臓手術などを受けた後に死亡したり、重い後遺障害が残ったりした患者8人について、患者・遺族側と示談が成立したと発表した。病院の事故調査委員会に患者側も参加して原因究明を進めた点が特徴的で、医療紛争が増えるなか、民事訴訟などによらず解決を探る一つの先例となりそうだ。
同病院では、01年に群馬県高崎市の小学6年、平柳明香さん(当時12)が心臓手術後に死亡した事故で、医師らによるカルテ改ざんが発覚。03年7月には、同病院で医療ミスの被害に遭ったと訴えるほかの患者の家族らが被害者連絡会を結成した。病院側は04年に医療事故調査検討委員会を設けていた。
示談が成立したのは、95年1月から04年7月に心臓手術などを受けた後、死亡した患者5人と脳に重い障害が残った3人の家族ら。病院側はいずれの事例も「患者や家族への説明が不十分だった」と認めたが、カルテの記載不備など記録の管理がずさんで、原因は特定できなかったという。
病院側は7家族に解決金を支払ったが、金額は明らかにしていない。1家族は辞退したという。
次男(当時18)を亡くした横浜市の上西富美子さん(54)は、この日開いた記者会見で「苦渋の決断だった。病院は現場教育を徹底して、本気で再発防止に取り組んでほしい」などと話した。
永井厚志院長は「医師の説明不足など診療態勢に不備があったことは大変申し訳ない」と謝罪した一方、「患者側も交えた医療事故の検証制度は画期的だ。医療界に広めていきたい」と述べた。
会見に同席した平柳さんの父、利明さん(56)は「民事訴訟では患者側に事故原因の立証責任があり、負担は計り知れない。家族や外部からも人を入れて病院が事故原因を究明する仕組みは評価できる」と話した。