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2007年04月12日(木) 21時19分

対日友好ムードのメディアVSネット掲示板には反日世論読売新聞

 【北京=杉山祐之】中国の温家宝首相の訪日で、共産党政権の指導下にあるメディアが一斉に対日友好ムードを打ち出しているのに対し、インターネット掲示板には、反日的な意見が多数寄せられている。

 そこでの対日不信は相変わらず強く、日本と握手した温首相を暗に批判する声さえ出ている。「当局の世論誘導」(北京の知識人)の裏で、中国の対日世論は、なお非常に不安定な状況だ。

 温首相の国会演説があった12日、大手ニュースサイト掲示板には、1分間に何本というペースで書き込みが入ってきた。各サイトでは日中首脳会談が行われた11日夜から書き込みが続いている。

 「日本の国連安全保障理事会常任理事国入り断固反対!」「お笑いだ」「譲歩しすぎだ」——。中国が国際社会での日本の役割拡大に期待を表明した共同プレス発表の国連改革の項目に何人もがかみついた。ちょうど2年前の2005年4月、中国各地で吹き荒れた反日デモで多くの中国人が「日本の常任理事国入り反対」を叫んだ。デモは当局に封じられたが、強い感情が残っている。

 プレス発表が、「日中双方」は歴史を直視するとしたことも、「違う。日本は直視しなければならない、だ」などと批判された。

 現在は、「当局のネット監視網が整備され、不用意な発言はできない」(知識人)状況にあるとされ、直接の政権批判はほとんどない。「政権転覆を扇動した罪に問われる可能性がある」(中国筋)反日デモ呼びかけも見られない。ただ、日中首脳間合意に対する非難は、実質的に温首相非難の意も含んでいる。

 当局から目をつけられる危険がほとんどない単純な中傷、反日言論は、相変わらず目立ち、「小日本」「日本鬼子」などの蔑称も飛び交っている。

 もちろん、温首相の今回の訪日を高く評価する声も非常に多い。だが、「風格ある首相が小日本にさとす」的な表現も多い。

 互恵関係の重要性を説く声も少なくない。その一方で、「日本のいいところをもっと宣伝すべきだ」という意見は集中的に批判を浴びていた。いま、公的メディアが、日本のプラス面を積極的に宣伝している状況にもかかわらず、だ。

 複数の知識人は、「中国の対日世論を真に安定させる条件は、当局の宣伝ではない。報道、言論の自由だ。多角的な情報を自由に得られ、何でも自由に発言できる状況を作るしかない」と口をそろえる。

 ネット上には「抗日戦争映画をたくさん見たせいか、日本は信じられない」との書き込みもあった。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070412i313.htm