グッドウィル・グループ(GWG)の訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)が、東京都の介護事業所指定を不正に取得するなどしていた問題で、同社は都が3事業所の指定取り消し処分の手続きに入る当日、3事業所の廃業届を提出していたことがわかった。
この際、都は取り下げるよう求めたが、同社は聞き入れなかったという。都は10日、同社と「ニチイ学館」(千代田区)、「ジャパンケアサービス」(豊島区)の3社に業務改善勧告したことを公表したが、コムスンについては「本来は、介護保険法の処分では最も重い指定取り消しが相当。悪質な処分逃れの疑いがある」と指摘した。
都福祉保健局によると、指定取り消し処分を内定していたのは「銀座」(中央区)、「奥戸」(葛飾区)、「千歳船橋」(世田谷区)の3事業所。いずれも退職したヘルパーの名義を借りたり、別の事業所のヘルパーを常勤扱いにしたりして、介護保険法の基準を満たしたように装って申請し、開業後も人員不足が解消されなかった。
同局は昨年12月に立ち入り検査(監査)に入った後、3事業所から不正取得の経緯を事情聴取。監査結果を通知すると予告して先月23日に樋口公一社長らを呼び出したところ、同日朝に廃業届が出されたという。
3事業所のうち、奥戸事業所は約1か月前に廃業されたばかりの東新小岩事業所の利用者の受け皿にもなっていた。このため、同局幹部は「取り消し処分を逃れるための廃業ととれる」として取り下げるよう説得したが、同社は聞き入れず、都は受理せざるを得なかったという。
同法では、処分手続き開始前に廃業届が出された場合、指定更新を認めないなどのペナルティーを事業者に科すことができず、届け出の受理を拒むこともできない。このため、都は監査後の事業所廃業には都道府県知事の許可を要件にするなど、制度や法改正について近く国に意見書を提出する。