視覚障害者の生活を支援しようと開発されたデジタル技術が、偽造チケットなどを見破るのに利用できるとして、中国で注目を浴びている。GLDパブリッシング代表取締役社長の荒川譲氏に、技術の内容や開発に至った経緯などを聞いた。
無数のドットと透明なインクで偽造防止荒川 名前は「i(アイ)−タッチ技術」といい、2006年に完成しました。「極小二次元バーコード」という技術の1つです。バーコードはバー(棒)でコードを作成しますが、i−タッチは無数のドット(点)を使います。これを、同じく自社開発した透明なインクで印刷し、機械で読み取らせソフトウェアを動かします。
荒川 理由は2つあります。1つ目は、スペースやデザインの制約を受けないことです。バーコードだと、印刷する場所が必要なうえにデザインに影響を与えてしまいますが、透明なインクなら、紙面のどこにおいても、差し障りありません。
2つ目はコードを複数入れたり、他のコードと重ねたりできる、ということです。従来のバーコードやQRコードの上でも、いくらでも上乗せできます。
この、幾重にもコードを重ねられる点が、偽造に悩む中国で注目されたようです。まずは、安徽省烟草公司のたばこのパッケージに採用されました。さらに、国際イベントのチケット偽造防止策としても、関心が高まっています。
荒川 i−タッチ技術は、そもそも視覚障害者を支援する目的で開発を進めていました。今年3月に発売された「i−タッチトーク」はその目的に沿った製品で、音声データを録音・再生できるペン型の機械と、ドットコードが印刷されたシールを組み合わせたものです。
荒川 ペン型の機械に、まず「しょうゆ」と声で吹き込みます。その音声データと対応するシール型ドットコードを、今度はしょうゆびんに貼ります。あとは、このシールとペンを接触させるたびに「しょうゆ」と声で指示されるようになります。