[NOVA判決]「待ったがかかった『駅前留学』」
最高裁が消費者保護を強く打ち出す判断を示した。
英会話学校大手「NOVA」が約款で定めていた中途解約時の清算規定について、最高裁は「特定商取引法(特商法)の趣旨に反して無効」とし、NOVAの主張を退ける判決を言い渡した。
NOVAは、契約時に申し込むレッスン回数が多いほど、1レッスンあたりの料金が安くなる「大量購入割引制度」を採用している。中途解約した時は、前納金から受講済みレッスン料などを差し引いた金額が返還される仕組みだ。
受講済みレッスン料について、NOVAは、実際の受講回数に合わせて単価を決める清算規定を設けていた。解約者の男性は、大幅割引された契約時の単価で差し引く額を計算すべきだと主張した。どちらを採用するかで、実際に返還される金額は大きく異なってくる。
この問題で、最高裁は「利用者の解約権を十分保障することが特商法の趣旨だ。NOVAの清算規定は解約の自由を制約している」と判断した。
特商法は、英会話学校やエステサロンのように、ある程度継続することで成果が上がるとされる業種を「特定継続的役務」に指定して、規制をかけている。こうした業種では、期待通りの効果が得られるかどうか不確実で、利用者が結果として不利益を被ることが多いためだ。
消費者の保護は、特商法の最大の目的だ。これを何よりも重視すべきだというのが、最高裁の考え方だったのだろう。エステサロンなどでは、NOVAと似た形で中途解約に伴う返還金を計算しているところも多い。今回の判決の影響は広範囲に及びそうだ。
一方、経済産業省や東京都などの行政当局は、NOVAの清算規定を「問題なし」としていた。司法と行政の判断が割れた形だ。
原因の一つは、解約に関する特商法の運用基準があいまいなことにある。行政当局は、司法判断に沿って、新たな通達を出すなどしていく必要がある。
現在、特定継続的役務に指定されている6業種のうち、パソコン教室と結婚相手紹介サービスは、2004年に指定業種に加えられた。
トラブルが相次ぎ、国民生活センターが強く追加指定を要望した。経産省は今後も、社会状況の変化に合わせて、業種指定に柔軟に対応してもらいたい。
「契約してよかった」というケースはもちろんあるだろうが、そうでないことも少なくない。指定業種のサービスを巡るトラブルを防ぐためには、やはり利用者側の賢い選択が欠かせない。