農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」が発注した林道整備の調査業務をめぐる談合疑惑で、同機構OBを多く受け入れている同省所管の財団法人「森公弘済会」(東京)の担当者が、談合の方法を具体的に説明した「引き継ぎ書」を作っていたことがわかった。緑資源機構幹部との連絡の仕方についても触れているとされる。公正取引委員会も昨秋の立ち入り検査で入手し、官製談合を裏付ける有力な証拠として重視。OBの存在と受注との関係についても調べるとみられる。
これまでの公取委の行政調査に対し、複数の機構幹部や法人幹部は官製談合を大筋で認めているとされる。公取委は3日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑での刑事告発に向け、機構や受注した公益法人の幹部らに一斉に出頭を求め、任意での事情聴取に着手した模様だ。
関係者によると、引き継ぎ書は緑資源機構から森公弘済会に再就職した幹部が、後任に談合のやり方を伝えるために作成したとみられる。ほかの公益法人や民間コンサルタント会社の担当者との連絡方法や、機構側への受注希望の伝え方などを説明しているという。
同機構の地質・環境調査、測量は、本部のほか全国8カ所の地方建設部で発注される。法人や業者は本部の林道企画課長や各建設部の林道課長に受注希望を伝え、最終的には本部の課長が過去の受注実績などをもとに年度の落札予定業者を割り振っていた。「落札予定」に決まると、本部の課長や各建設部の課長が法人や業者の担当者を呼び、伝えていたという。
引き継ぎ書では、本部の課長から「天の声」を受けた場合でも、「地方建設部の課長にも必ずお礼を言う」などと手順を記していたという。
森公弘済会は76年発足。森林に関する調査研究や林道の環境調査、測量などが事業内容で、緑資源機構の「指定調査機関」にもなっている。塚本隆久・元林野庁長官が理事長を務めるほか、複数の同庁OBが理事に就いている。
事実上、緑資源機構OBの受け皿にもなっており、現在の理事のうち2人は同機構でも理事を務めていた。13人いる職員も、うち12人が同機構出身だという。
公取委の調べに、機構関係者は「OBがいるところには発注量を確保していた」などと説明したとされる。機構側は同弘済会が機構OBを多く受け入れている点を考慮し、特別に手厚く発注していたとみられる。
http://www.asahi.com/national/update/0403/TKY200704030267.html