「うち解けた雰囲気で話ができた。全体の7割5分は未来志向の話だった」。31日の会談終了後、麻生外相は報道陣に語った。しかし、韓国政府当局者は事前に「今回は特段の決定事項はない」と予告。共同声明や共同会見も準備しないクールさだった。
両国間に懸案は山積している。3月に東京で開かれたEEZ境界画定交渉では、韓国側が竹島周辺海域での海洋調査の事前通報制度導入を拒否した。自由貿易協定(FTA)交渉も、農産物の扱いをめぐり2年以上中断。韓国側は、この日も日本の積極的対応を促したが、めどは立たない。
両国関係が停滞しているのは、安倍首相と盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領との間が「完全に冷え切っている」(日本政府関係者)からだ。両首脳は昨年10月、北朝鮮の核実験直後に会談したが、大統領が力を込めたのは核問題ではなく、靖国参拝や慰安婦などの歴史問題だった。日本政府内には「大統領さえ代われば何とかなる」という空気も漂う。
外相会談では、安保対話や歴史共同研究といった個別の問題では前向きな調整も行われたが、一昨年から途絶えている首脳の相互訪問は再開の見通しが立たない。3月の日韓次官級戦略対話で日本は「大統領訪日には成果が必要」と及び腰で、韓国も消極的だった。
一方、核問題をめぐる最近の米朝接近で、韓国は重油5万トン相当のエネルギー支援負担や肥料支援の再開が容易になった。米韓間で長年の懸案だった戦時作戦統制権の移管問題や在韓米軍の移転縮小問題にめどがついた。米韓FTA交渉も妥結へ向かっている。「韓米関係は確実に好転している」(韓国政府関係者)なかで、慰安婦問題で米国内から出ている対日批判も韓国を勢いづけている。ある韓国当局者は皮肉を込めて言った。「韓国の主張は控えめだ。今は国際社会対日本という構図だから、韓国は静かにしていた方がよい」