今回の対象は、高校中学年(主に2、3年で使用)の教科書。224点が申請され、検定意見を受けて各出版社が修正したうえで222点が合格。不合格の2点は、いずれも生物2だった。
地歴公民のうち日本史では、沖縄戦の集団自決に関して「日本軍に強いられた」という趣旨を書いた7点すべてが「命令したかどうかは明らかと言えない」と指摘され、各社は「集団自決に追い込まれた」などと修正した。日本史の教科書は昨年も申請できたが、その際にはこうした意見はつかなかった。
文科省は、判断基準を変えた理由を(1)「軍の命令があった」とする資料と否定する資料の双方がある(2)慶良間諸島で自決を命じたと言われてきた元軍人やその遺族が05年、名誉棄損を訴えて訴訟を起こしている(3)近年の研究は、命令の有無より住民の精神状況が重視されている——などの状況からと説明する。昨年合格した出版社には、判断が変わった旨は知らせるが、すぐに修正を求めることはしない方針だ。
地歴公民では、他にも時事問題で政府見解に沿った意見がついた。その結果、イラク戦争では、「米英軍のイラク侵攻」が「イラク攻撃」に、自衛隊が派遣された時期は「戦時中」から「主要な戦闘終結後も武力衝突がつづく」に変わった。首相の靖国参拝をめぐる裁判では、「合憲とする判決はない」という記述に「私的参拝と区別する必要がある」と意見がつき、「公式参拝を合憲とする判決はない」となった。
南京大虐殺では今回も、「犠牲者数について、諸説を十分に配慮していない」との意見が日本史5点についた。一方、政治・外交問題となり、中学の教科書からはなくなった「従軍慰安婦」(「慰安婦」「慰安施設」を含む)の問題は16点で取りあげられたが、意見は一つもつかなかった。
http://www.asahi.com/national/update/0330/TKY200703300295.html