沸騰水型原子炉の仕組み
関係者によると、同原発には制御棒は137本あり、このうち34本が抜け落ちた。直後に運転員が気づき、すぐに元の位置に戻したという。
圧力容器の圧力を抜くための安全弁が開いたのが原因で、これまでに発覚した一連の制御棒脱落の原因とは違うという。
原子炉につながる配管の弁を閉じたままにするため電源を切っていたが、同系統の別の弁を閉めようと電源を入れた際にこの弁が開いてしまった。このため、原子炉内の圧力が抜けて制御棒を抜く力が働いた。
制御棒は、原子炉内で核分裂に不可欠な中性子を吸収し、核反応を抑える働きがある。同型炉では、手順書の間違いなどで水圧を調整する弁の操作ミスをした結果、制御棒が脱落していた事例が相次いで発覚。北陸電力志賀原発1号機では臨界事故につながっている。想定外に複数の制御棒が落ちる事態は、構造上の問題として防止策の検討が迫られるものだ。
制御棒の脱落では、ほかに、同じ下から挿入するタイプだが少し構造が違う改良型沸騰水型炉でも、柏崎刈羽原発6号機で96年に電気的な操作ミスで、制御棒が4本抜けた例があったという。
また、日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県敦賀市、加圧水型、出力116万キロワット)では、97年に原子炉格納容器の密閉性を確認する試験の際に、国の検査官の目をごまかして不正に合格していたこともわかった。
原子炉格納容器は、原子炉圧力容器を囲む巨大な鋼鉄製の容器。重大な事故が起きても放射能が漏れないよう、高い密閉性が求められている。
調査によると、圧力を調整する弁に不具合が見つかり、漏れが大きくなった。このため、板を張ってふたをして一時的に漏れないように処置し、立ち会った国の検査官の目をごまかして試験に合格していた。不具合があった弁は、この2日後に交換した。
密閉性を確認する試験をめぐっては、東京電力の福島第一原発1号機で、91、92年の2回の定期検査の際に、漏れた場所が分からないのに別の場所からガスを入れ続けて漏れがないように装っていたことが、02年に発覚。保安院は当時発覚したトラブル隠しの中でも極めて悪質だとして、同機を原子炉等規制法に基づく1年間の運転停止処分にしている。
今回の敦賀原発のケースについて、保安院原子力発電検査課は「国が定めた技術基準上の不適合管理にあたる可能性があるが、漏れの原因が分からないまま隠したわけではないので悪質ではない」とみている。
保安院は発電施設でトラブル隠しが相次いだため、電力12社に調査を指示しており、東電と原電を除く10社も同時に報告書を提出する。また、保安院は30日、原子炉メーカーの日立と東芝に、一連の制御棒脱落について報告書を提出するよう求めた。
http://www.asahi.com/national/update/0330/TKY200703300131.html