輪島塗の漆器を製造、販売する630事業所の大半が何らかの被害を受けた。
木地を作る橋田ヨシ子さん(60)の木工所。住宅を兼ねた2階建ての作業場では地震の激しい揺れで、棚に並べていた木地が、床に落ち散乱した。少しでも傷がつけば商品価値はなくなる。「お金を捨てているのと一緒ですよ」。木地を運び出しながら橋田さんは嘆く。被害額は200万〜300万円。
作業場となる土蔵が多く崩れたことも作業再開への支障となっている。温度や湿度を一定に保ち、ちりやほこりのない中で塗りと乾燥を繰り返す作業には土蔵の環境が欠かせないためだ。
操業再開まで3カ月かかるところもあるという。業界では廃業が相次ぐことを懸念している。
酒造会社の痛手も大きい。輪島市河井町の日吉酒造はこの冬の最後の仕込み中だった。土蔵が傾き、倒壊の恐れもある。日吉謙一社長(60)は「暖冬の影響で、発酵が進みすぎないよう仕込みのタンクを氷で冷やすなど苦労した。その分、出来に自信はあったのに残念だ」と話した。
旧門前町黒島地区にある県指定文化財の「角海家(かどみけ)住宅」。「北前船」の寄港地として栄えた江戸時代の船問屋の建物だ。
南北1キロにわたって約300軒の集落が広がり、黒い瓦屋根と板壁の家並みが続く。ほぼ全戸が被害を受け、2割近くが倒壊の危険がある。
能登観光の一つとして、文化財保護法による「伝統的建造物群」としての保存を検討し始めていた矢先だった。
http://www.asahi.com/national/update/0329/OSK200703280188.html