故金丸信・元自民党副総裁の後継者だった横内氏は、1月の県知事選で同じ金丸派の前職を破り初当選した。余勢を駆って、知事派は県議選に現職9人のほか新顔、元職計6人を擁立する。標的は知事選で敵対した自民系現職県議だ。知事派のベテラン県議たちも「前知事派を追い落とすための『刺客』として立てた」と認める。そのうちの一人で知事の元公設秘書、永井学氏(32)=甲府市選挙区=は「抵抗勢力から知事を守る」と意気込む。
一方で「私は知事派」として、県議選への立候補を表明した新顔、元職は10人前後に上る。
「地元選出の県議は知事の反対派。私が知事を支えたい」。こう語るのは、笛吹市選挙区に立候補表明した里吉至光氏(67)だ。03年県議選にも出たが落選。以来、地域の山林を開墾してブルーベリーづくりに打ち込んできたが、横内知事誕生で県政への興味が戻ってきたというのだ。
勢力拡大に喜ぶ声はあるが、知事の選対幹部だった県議などは「誰も彼もが『知事選で応援した』と言うが……」と苦々しげだ。知事が立候補予定者に贈る「祈必勝」の張り紙の依頼は、知事選で敵対した県議からも絶えないという。
こうしたなか、反知事派である自民勢力は失速し、党県連会長ら現職4人が2月以降、相次いで引退を表明した。ある選挙区では、「刺客」候補2人が名乗りを上げたものの、標的となった現職が引退を決め、2人で争う羽目に陥っている。
知事の後援会幹部の表情は複雑だ。「自称『刺客』まで当選すれば、オール与党で議会対応は楽になるが、議会のチェック機能は期待できなくなる。知事が裸の王様になってしまわないだろうか」