3例とも制御棒を下から炉心に入れる沸騰水型炉。志賀原発など制御棒脱落が問題になった日本の原発と同タイプだ。
NRCによると、87年にスウェーデンのオスカーシャム原発3号機で、試験で制御棒を抜いたところ誤って臨界に達した。中央制御室に表示が出たが、運転員が気づくのに遅れた。短時間で炉を止める緊急システムも作動しない状態となっていた。こうした状態で臨界となった例は米国ではなく、重くみたNRCが文書を出したようだ。
文書は米国で起きた2例も報告。73年にバーモントヤンキー原発で、試験中に抜いた状態だった制御棒の隣の制御棒を誤って抜き、臨界状態となった。76年にはミルストーン原発1号機で誤って隣接の制御棒を抜き、臨界状態に。3例とも作業手順書に違反し、計測値の確認が不適切だった。
日本では北陸電力や東北電力、東京電力、中部電力の8原発で制御棒が脱落したことが最近、判明。水圧で制御棒を動かす系統の操作ミスなどで、欧米の事例と共通点も少なくない。
NRC文書が出たのは86年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故の2年後。安全への関心が国内外で高まっていたが、当時、日本の規制当局が何か対応した記録は、確認できる範囲で残っていない。経済産業省原子力安全・保安院は「保安院が01年にでき、NRCとはより連携を密にしており、今なら対応した」という。
保安院は原発の事故があった場合、国際評価尺度で最も軽い「0」から、深刻な「7」までのレベルのうち、「2」以上を国際原子力機関(IAEA)に報告する。茨城県東海村のJCO臨界事故(99年)は「4」で、関西電力美浜原発蒸気発生器細管破断事故(91年)は「2」だった。今回の志賀原発の臨界事故の評価はまだ決まっていない。
軽微な情報もIAEAのデータベースに登録して情報共有化を進めている。02年の東京電力の原発不正問題のあと、国も電力業界も情報共有化の充実を進めている。