■政務調査費 明細なく実態は闇
「¥493500、但(ただ)しバス代金として」
「¥750000、A、B、C、D、E先生」
県議会の05年度「政務調査費収支報告書」に添付された領収書だ。行き先が書かれている領収書はほとんどない。期間の記入がないものさえある。県議が政務調査の視察をした際の旅費と思われるのだが、はたして……。
政務調査費。県議が視察や調査研究用の資料購入などにあてる費用を、税金で負担している。和歌山県では年間1億6560万円。
しかし、全国では政務調査とまったく関係ない支出例が相次いで見つかり、批判を浴びた。
議員同士のスナックでの飲食代(岩手県議会)、官能小説や幼児対象教材の購入(東京都品川区議会)など。いずれも住民の監査請求や新聞社の調査で明らかになった「あきれた使い道」だ。
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3月7日に閉会した県議会2月定例会。政務調査費の条例改正案が、議員側から提案された。
「会派に月額6万円×所属議員数、議員に月額24万円」としていた支給割合を、「会派に月額3万円×所属議員数、議員に月額27万円」と改めるという内容。総額を変えずに、議員個人への支給を手厚くした。
「本件については、いずれも提出者の説明等を省略し、これより直ちに採決いたしたいと思います。ご異議ございませんか」
本会議では提案理由の説明も、反対討論もないまま、条例改正案は全会一致で可決された。
5万円以上の支出については、領収書を添付しなければならないが、05年度分を見ると、各議員に支給された政務調査費計約1億3千万円のうち、領収書が添付されていた割合は全体のわずか4.5%にすぎない。
「政務調査費は公金だ。すべての領収書を公開して当たり前ではないか」。市民オンブズマンわかやまの畑中正好事務局長はこう憤る。「政務調査=後援会活動と間違えているのではないか。今回の改正は、議員報酬をカットした穴埋めに、個人で自由に使える金を増やしたのではないのか、と疑ってしまう」
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「公金だから、1円から公開するにこしたことはない。でも、労力がかかるし、そのための人件費も必要になる」
ある県議はあきらめ顔だが、「1円からの公開」は、本当に無理なことなのだろうか。
長野県議会では、すべての支出に使途明細のある領収書が添付され、さらに活動記録票で「いつ、どこで、誰と、何をしたか」が報告される。収支報告書と添付書類は、県議58人分で年間約2万枚にも及ぶ。さらに議会事務局の職員が不透明な支出がないかチェックするという。
「政務調査費はあやふやになりやすい経費。税金なのだから、それぐらいの作業をやっても仕方ないのでは」。長野県議会事務局の担当職員は話す。
全国市民オンブズマン連絡会議が実施する情報公開度ランキング。長野県議会は、政務調査費部門で満点だった。ある長野県議はこう語る。
「全面公開は、やってできないことはない。議会にやるという姿勢があるのかないのか、だ」
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