鹿島鉄道(石岡—鉾田、27・2キロ)は31日、1924(大正13)年に鹿島参宮鉄道として開業して以来、83年の歴史に終止符を打つ。利用客の減少に歯止めがかからず、昨年12月に廃線が決定。最後の日が迫るにつれて乗客が増え、ホームはラッシュのようだ。長年、地域に親しまれた「かしてつ」の廃線を惜しむ声が高まる一方で、鉄道施設の処分や、今後の代替バスの運行を心配する人たちもいる。(小林豪、川島幹之)
28日午前、同鉄道が発着する石岡駅の5番線ホーム。平日にもかかわらず、車両が着くとカメラを抱えた乗客であふれかえった。職員は「もっと前から関心を持ってもらえれば、いい結果になったかもしれない……」と複雑な心境だ。
●売り上げ5倍
今月に入り、車両に付けた「石岡—鉾田」の方向板が盗難にあった。鉾田駅に置いていた記念スタンプも一時紛失する騒ぎがあり、今は全駅から回収。廃線の盛り上がりは、一部の鉄道ファンを暴走させている。
行方市玉造甲の和菓子店「吉田屋」では、「走れ!鹿島鉄道」と名付けたカステラが以前の約5倍の売り上げだ。4年前、同鉄道の車両と色合いが似ていることから命名した専務の野原邦雄さんは、今も廃線の実感がわかない。「鉄道のありがたみは電気や水と同じ。なくなってから不便さに気づくんでしょう」
●譲渡の希望者も
鉄道ファンにとっては、廃線後の車両の行方が重大な関心事。同鉄道には9台の気動車があり、約70年前に製造された国内現役最古の「キハ601」や、レトロなデザインが人気の「キハ432」など、希少価値が高い車両がそろう。
関係者によると、複数の譲渡希望者が名乗りを上げ、現在、同鉄道と交渉中という。その一人、小美玉市で病院を営む諸岡信裕さんは「病院の敷地内に保存して、お年寄りや子どもたちに開放したい」と話す。
ただ、譲渡を求められた車両は3台ほどで、他は解体される見通しだ。駅舎は鉾田方面から順次、取り壊し作業に入る。「鹿島鉄道存続再生ネットワーク」代表の長谷川功さんは、「線路などの跡地が放置されると治安的にも良くない。今後は跡地の有効利用を提言していきたい」。
●高校入学者に影響?
廃線後の4月からは、関鉄グリーンバスが石岡—鉾田間の代替バスを運行する。今月20日に地元自治体が開いた住民説明会では、参加者から不安の声が上がった。
沿線にある県立小川高校(小美玉市)の栗又衛教諭は「朝は渋滞で遅れが出そう。本数が足りるかも心配だ」。例年80人を超えていた同校の入学者は今春、68人に減少した。同校の関係者は「廃線が一因かもしれない」と漏らす。
鹿島鉄道は自治体から財政支援を受けていたが、代替バスは当面、自力で運行する。乗客の増加は見込めず、赤字が続いた場合、財政支援がなくても存続できるのかどうかとの課題も残る。
鉾田市では今年になって、市民団体「鉾田ネバーギブアップかしてつ」が結成された。「廃線」ではなく「一時的な休止」を求め、約1万1千人の署名を同鉄道に届けた。代表の吉田亜里子さんは「廃線になっても鉾田駅に車両を残し、全国のファンや市民が集う鉄道交通公園づくりの運動を起こします」。
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