全国の元労働者ら962人(06年10月現在)が11地裁で起こした「トンネルじん肺訴訟」の4度目の判決。これまで東京(06年7月)、熊本(同)、仙台(同年10月)の各地裁で国の不作為責任を認める判決が言い渡されている。いずれも国は控訴しているが、国は4度続けて裁判所から具体的な解決策を迫られた格好になった。
徳島訴訟の原告は、49〜00年に工事に従事し、いずれもじん肺の労災認定を受けた徳島、香川、兵庫、愛知の4県と大阪府の58〜82歳の男性計26人。03年9月に提訴し、その後、4人は死亡した。
判決は、国は旧じん肺法が施行された60年4月以降、トンネル建設現場にじん肺患者が多数存在し、衛生環境を改善する措置をとる必要性が高いことを認識していたと指摘。具体的には、(1)粉じんを飛散させないための散水措置(2)湿式削岩機と防じんマスクの使用(3)許容濃度の設定と定期的な粉じん測定と評価——を事業者に義務づけなかったのは、裁量の範囲を逸脱して著しく合理性を欠くとした。
国の不作為責任が生じた時期については、東京、仙台両判決が、ゼネコンや国の参加する業界団体が「地下工事における粉じん測定の指針」を出した86年末ごろとしたのに対し、熊本判決は60年4月以降と認定し、判断が分かれていた。今回の徳島判決は、熊本判決同様、ほかの2判決より踏み込んだ判断を示した。
さらに、国が主張する「時効の成立」については、粉じん対策について国の責任を初めて認めた「筑豊じん肺福岡高裁判決」から3カ月経過した01年10月19日が起算点だとし、消滅時効(3年)は完成していないと退けた。
http://www.asahi.com/national/update/0328/OSK200703280027.html