【業績低迷】
井植敏雅氏が4月1日付で社長を辞任し、取締役には残る方向で最終調整に入り、敏氏は最高顧問を辞任するという人事を28日の役員会で決めるという。
創業者の孫にあたる敏雅氏は2005年6月、社長に就任。同時に野中氏が会長に就任したことが「世襲批判をかわす話題作り」と指摘された。
敏雅氏と野中氏は、地球環境重視をうたう「シンク・ガイア」を経営理念に掲げ、電池や業務用空調機器、携帯電話、デジタルカメラなどを中核事業に改革を目指した。しかし、業績は一向に回復せず、中期経営計画の見直しを余儀なくされ、07年3月期でも3期連続赤字に転落する見通しとなっている。
業績不振に加え、携帯電話向け電池の破裂事故や洗濯乾燥機の発火事故も発生。さらには不正会計も、深刻な問題に発展する可能性も指摘されている。そして「弾よけ」とみられていた野中氏が19日に会長を突然辞任、焦点は創業家の責任問題となっていた。
【金融団が実権】
かねてから敏雅氏は「改革をやり切るのが経営責任」と自らの続投を強調してきたが、ここにきて動き出したのが三洋の優先株を引き受ける形で3000億円を投じて大株主となった米ゴールドマン・サックス(GS)、大和証券SMBC、三井住友銀行の金融団。
3社で5割超の議決権を持つほか、取締役も金融機関の関係者が過半数を占める。「会社を動かしているのも三井住友銀行出身の前田孝一副社長」(家電アナリスト)といわれている。
「銀行という性格上、取引先と長期間付き合うことを想定している三井住友に対し、一定期間に収益を上げることが求められる証券会社のGSは資金回収を急いでいる」(同)など温度差を指摘する見方もあるが、相次ぐ問題に業を煮やし、創業家の責任を問うことで一致したようだ。
【売却進む】
名実ともに金融機関が経営の主導権を握ることで、不採算事業の売却が加速しそうだ。
すでに三洋電機クレジットを米ゼネラル・エレクトリック(GE)に売却するほか、半導体事業もGSと大和SMBCが財務アドバイザーとなり、国内外の半導体メーカーや投資ファンドから入札で売却する方針だ。
さらに敏雅社長が辞任すれば、肝いりの「中核事業」も聖域ではなくなる。中でも業績が伸び悩んでいる携帯電話やデジカメ事業の売却が検討されることになりそうだ。
故・井植歳男氏が創業して60年。くしくも不二家が97年間、6代にわたって続いた同族経営に終わりを告げたのに続き、三洋の経営も3代目にして創業家の手を離れることになる。
ZAKZAK 2007/03/27