エレベーター会社「シンドラーエレベータ」(東京都江東区)と、独立系保守点検会社「ハイン」(新潟県三条市)の社員、元社員計67人が、実務経験を偽ってエレベーター検査の資格を得ていたとして、国土交通省は27日、全員の資格を失効させた。
67人が法定点検を実施した推定約2600台のエレベーターについて再点検を実施する。
失効となったのは、シンドラー社が87〜03年にかけて「昇降機検査資格者」の資格者講習を受けた53人、ハイン社が01〜06年の14人。
67人は、受講資格である、専門学歴に応じた実務経験年数が足りなかったのに、入社年次や勤務内容を偽って受講し、資格を得ていた。
中には、11年の実務経験が必要なのに、実際は入社直後だったり、営業担当しかやっていなかったケースがあった。こうした経歴は提出書類に社長などの印鑑とともに会社が証明しており、国交省は会社ぐるみの不正行為と判断した。
シンドラー社製のエレベーターを巡っては、昨年6月、高校2年生の男子生徒が死亡した事故が起きており、他社に委託先が替わる05年3月まで、受講資格を偽った1人が事故機の保守点検を交代で担当していた。
エレベーターには年に1回、建築士や昇降機検査資格者による法定点検が義務づけられている。国交省では、67人のリストを建物を所管する全国の自治体に送付、再点検の対象となるエレベーターの特定を急ぐ。
今回の不正は今年1月末、国交省などに、両社別々に送られてきた匿名の投書で発覚した。
シンドラー社社長室の話「本社として指示をしたわけではないが、有資格者を増やすことをビジネス上の優先項目としており、各支社などに不正を許す雰囲気があったのかもしれない。関係者の方にご迷惑をおかけしたことをおわびします」
ハイン社の話「仕事の段取りを優先させるために、現場の担当者の判断で行っていたようだ。不正を把握していなかったことは非常に申し訳ないと思う」