SEAでは、事業計画が複数案ある段階で、大気環境や生態系、温室効果ガスの排出などの環境影響を評価・予測し、住民や自治体の意見を求める。国などに計画を届けた後に評価手続きが始まる現行制度より、問題があった場合に計画の大幅な変更がしやすくなる。
2月に公表された素案では、道路やダムをはじめ、発電所を含めて現行の事業アセスが対象とする13事業すべてを対象としていた。しかし、早い段階で事業内容が明らかになると事業がまとまりにくくなり、コスト増も招くなどとして、電力会社でつくる電気事業連合会などが導入に反対。経済産業省や自民党の一部も同調した。
このため環境省は「関係者の理解が得られなかった」として、発電所を対象にすることを断念。27日開かれた研究会の最終会合で、西尾哲茂・総合環境政策局長が「発電所についてはSEAの取り組みを求めない」と表明した。今後、他の12事業について、今回の共通ガイドラインをもとに関係官庁が個別のガイドラインをつくり、モデル事業を実施していく。
研究会では、多くの委員から発電所を例外扱いすることへの異論が出た。東工大の原科幸彦教授(環境計画)は「SEAを導入すれば平時からの情報公開が進む。電力会社の隠蔽(いん・ぺい)体質を改善するきっかけになったのに残念だ」と述べた。
SEAは、環境保護団体なども早期実施を求めてきた。世界自然保護基金(WWF)ジャパンは「SEAで、住民の合意のもとで情報公開のルールを定めておけば、臨界事故隠しのような事態は起こらなかったはず。電力会社が導入しないのは将来的な損失になるのではないか」と批判する。