ホテルのスプリンクラーが作動し、水でぬれた畳を運ぶ従業員=26日午前9時21分、石川県七尾市和倉町で
ホテルのスプリンクラーが作動し、水でぬれた畳を運ぶ従業員=26日午前9時34分、石川県七尾市和倉町で
奥村由美子さん(67)らが家族で経営する旅館「和潮(かつしお)」は26日午前、約30人の宿泊客の朝食の準備などに追われた。数年に1度、建物の構造強化するなど改修してきたこともあって建物は無事だった。奥村さんは余震が続き、昨夜は不安でなかなか眠れなかったが、「どうしても泊まりたいという人は断れない」と営業は続けるつもりだ。
地震発生当日、同市にあった相馬中学校を52年に卒業した約20人が宿泊した。奥村さんは「地震で苦しんでいる人がいるなかで、派手なことはできない」と、夜の宴会でもカラオケは遠慮してもらったという。
同窓会は別の旅館を予定していたが、地震で営業中止となり、この旅館に急きょ変更した。卒業以来55年ぶりに再会したという徳永と志子さん(70)は「元気な顔に出会えて、とても幸せです」と喜んでいた。
旅館「奥田屋」のおかみ奥田育子さん(82)は、26日も午前7時に起床、予約客3人の準備に立ち働いた。大正生まれで、創業100年目を迎える旅館の3代目。5人の息子を育て、次男(58)と2人で営む。足腰が弱くなり2階の客室に上がれなくなったが、柔らかな笑顔で毎日玄関に立ち、客を迎え入れる。
地震で、箱1杯分の茶わんが割れた。自慢の温泉も湯元からパイプが寸断されて、湯は張れない。だが、建物本体の被害はほとんどなかった。何度か補強をしてきたお陰と思っている。「生まれてからずっと旅館と一緒。旅館から頑張れって、言われている。温泉も直し、一日も早くお客さんがゆっくり湯につかれるようにしたい」と力を込めた。
http://www.asahi.com/national/update/0326/OSK200703260086.html