苦境に立たされる夕張市に大きな拍手、歓声がこだました。臨時結成した松山らの道産子カルテットが、「元気で!」「また会いましょう」と叫びながら会場に手を振る。ファイナルでは「北酒場」と「長い夜」を4人で熱唱するなど、夕張市民にとっては熱気にくるまれた約3時間の夢空間だった。
北海道・足寄町出身の松山が提案した北海道出身者による夕張支援企画に3人が賛同した。同市出身の大橋を筆頭に細川(真狩村)安倍(室蘭市)がノーギャラで駆けつけた。会場は夕張最大のホールだが、コンサートをやる場所ではない。ホールの電力の年間消費量を1日で超えてしまうとの理由から、電源車を持ち込んでの運営だった。リハ中も暖房を切って節約するなど、夕張市の現実を物語る公演だった。
1番手で登場した松山はオープニングで「約束通りやってきました。何かと交際範囲の広い松山です」とブラックジョークで爆笑を誘った。2月中旬以降、暴力団会合への出席問題を重く受け止め、ラジオのレギュラー番組は休止中だが「問題とは別に市民を元気づけたい」(関係者)。ヒット曲「君を忘れない」を歌いながら場内を回り、拍手喝采を浴びた。千春のギターで安倍が「大空と大地の中で」をコラボレーションするシーンもあった。
細川は「矢切の渡し」を熱唱中に「歌詞間違えた!」と、ちゃめっ気たっぷりに笑いを誘い、故郷に帰省した大橋は「ただいま」とあいさつ。安倍も「笑顔を絶やさないで、負けないで」と呼び掛けた。60代の女性は「一瞬でも嫌なことを忘れさせてくれた。本当に感謝」と、お土産で配られた夕張メロンゼリーを手に感激していた。
会場いっぱいの約1700の入場者は、はがきでの応募で当選した夕張市民限定。人口約1万3000人の約65%に当たる8549人の応募があり、倍率約4・5倍(当選約1900人)の難関。会場前から300人以上が長蛇の列を作るほど、市民が待ちわびたコンサートだった。【村上秀明】