シアタープロダクツ=いずれも大原広和氏撮影
ミントデザインズ
ドレスキャンプ
GVGV
ネ・ネット
シアタープロダクツ(武内昭・中西妙佳)のテーマは「ノスタルジア」。モデルの髪形と化粧は一昔前の人形のよう。ポリエステルやビニールという安っぽい素材を使い、ぼやけた花柄があいまいな「あの日」を呼び起こす。フィナーレは紙テープで「出航」。
肩に大きなクッションをのせた「立ち枕」、レースのアイマスク。「ミッドナイト・ブック・クラブ」と題したミントデザインズ(勝井北斗・八木奈央)のショーには、遊び心のある小物が登場した。ネグリジェ風のワンピースや、ゆったりしたふくらはぎ丈のジャンプスーツでリラックス感を表現。少女のころの健全な夜更かしを思い出させる作品を見せた。
ドレスキャンプ(岩谷俊和)は「勢いを見せる時期は終わった」と「アートクチュール」という芸術と服作りの基本へと回帰。伊藤若冲(じゃくちゅう)風のクジャク柄プリントや丸がモチーフ。オーガンディを何枚も重ねて球を作るように、手を掛けて美と芸術性を追求した。
GVGV(マグ)は「月影さすロンドンの石畳」をイメージ。ボリューム感のあるシックな「大人のミニ」を提示した。リミ・フゥ(山本里美)は「和服の良さを現代の女の子の洋服に落とし込んだ」と直線の美しさを持ち込んだ。
開幕を飾ったメルシーボークー(宇津木えり)やネ・ネット(高島一精)は、東京の売りである「カワイイ」にユーモアや一抹の気持ち悪さ、怖さを加え、奥行きを持たせている。
ソマルタ(廣川玉枝)はキラキラ光る宇宙的なインナーでどきりとさせたが、服はむしろ正統派。ハンアンスン(ハン・アンスン)はピカピカ感を鮮やかな青や黒と組み合わせ、可愛くセクシーにまとめた。
今回の作品にはケープが多くみられたが、上部がタイトで腕が動かしにくそうなデザインが目に付いた。セーターも同様で、半端に自由で不自由な日本の象徴のようにも思えた。
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運営は終盤にかなり改善されたものの、各部署の連携に大きな問題を残した。例えばショー後は舞台裏での取材が恒例だが、ブランド側と会場担当者の連絡の行き違いから、デザイナーに会おうとする各社の記者が止められるトラブルも起きた。「待っていたのに、誰も取材に来ないので変だと思った」というデザイナーが一番の被害者だ。
何のためのJFWかという根本的な共通認識作りが必要だろう。