2007年03月25日(日) 12時00分
経済格差、テロ…アフリカ映画が伝える真実(オリコン)
昨年の『ホテル・ルワンダ』のヒット以降、アフリカを舞台にした作品の公開がその数を増やしている。現在、経済格差やテロをはじめ、世界が抱えている問題がもっとも端的に表れる場所はアフリカといわれている。
そのことを証明するように、ドキュメンタリー、フィクションとかたちはさまざまながら、アフリカを題材にした作品が次々と製作されるようになった(
写真など作品の詳細はこちら )。
正月に登場した『ダーウィンの悪夢』(現在日本各地で順次公開中)はタンザニアのビクトリア湖で獲れる魚を軸に、先進諸国がいかにアフリカを食い物にしているかを明らかにしたドキュメンタリーだったが、その図式はさまざまな作品に表れている。
レオナルド・ディカプリオがアカデミー主演男優賞にノミネートされた4月公開の『ブラッド・ダイヤモンド』は、シエラレオネの紛争地帯で反政府軍の資金源となっているダイヤモンドを題材にしている。ダイヤモンド業界の暗躍が新たな紛争の根をつくり、武器商人、白人傭兵たちを潤す。『ラスト サムライ』で知られる監督のエドワード・ズウィックは、そうした実態を踏まえ、いたいけな少年を残酷な兵士にする事実をも明らかにしている。ダイヤモンドをめぐるサスペンスいっぱいのエンターテインメントのかたちで、アフリカの悲劇を浮き彫りにした手腕は高く評価されている。
同じく今年のアカデミー賞で注目を集め、フォレスト・ウィテカーが主演男優賞に輝いたのがまもなく公開される『ラストキング・オブ・スコットランド』だ。1970年代にウガンダの独裁者として権勢を振るったイディ・アミンの人間像を、主治医となった若きスコットランド人医師の視点から描いた人間ドラマで、ウィテカーがアミンに扮して熱演を繰り広げる。
監督は『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』などで知られる、ドキュメンタリー畑のケヴィン・マクドナルドとあって、ウガンダにロケを決行。利害を求める英国政府の後押しで、大統領となったアミンが暴走していく過程をくっきりと紡ぎだしていく。どこまでもリアルで生々しい映像とウィテカーの演技が圧巻である。
また4月には、昨年のアカデミーで外国語映画賞を手中に収めた南アフリカ映画『ツォツィ』も公開される。アパルトヘイトが廃止されて10年を超えたが、今も差別が残り、経済格差で苦しむ黒人たちが溢れる南アフリカ・ヨハネスブルグを舞台に、ひとりの不良少年が赤ん坊と出会ったことから、生きることの意味を知るストーリー。過酷な現実をパワフルな映像でとらえた瑞々しい語り口は観る者の心に沁みる。監督のギャヴィン・フッドはこの成功でハリウッド進出も決定したが、それも頷ける仕上がりだ。
まもなく公開される『約束の旅路』は、ユダヤ人と偽ったエチオピア少年の軌跡を紡いでいる。エチオピア系ユダヤ人という存在が初めて紹介されたばかりか、イスラエルが“モーゼ作戦”と名づけて、彼らをイスラエルに移送する作戦を現実に行った史実も、ここで明らかにされる。監督はルーマニアからフランスに移住したラデュ・ミヘイレアニュ。この作品で世界的な注目を集める存在となっている。
この他、現在日本各地で順次公開されている『ルワンダの涙』は、『ホテル・ルワンダ』と同じく、1994年4月に起きたフツ族によるツチ族虐殺を題材にした力作。監督マイケル・ケイトン=ジョーンズが『氷の微笑2』とはうってかわって、骨太な演出を心がけている。ルワンダに関しては、4月7日から20日まで“シネマアフリカ2007ルワンダの記憶”と題されたイベントも行われる。『四月の残像』や『ルワンダ虐殺の100日』をはじめ、さまざまなアプローチの作品が上映される予定となっている。
注目のアフリカ映画作品の詳細 はこちらへ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070323-00000029-oric-ent