「私たち白人は、あなた方の手で鎖につながれることで、アフリカで何があったのかを感じたいのです」
ロンドン郊外の学校で23日、「鎖の行進」を率いるキリスト教系団体のデービッド・ポットさん(60)は約80人の黒人の子どもたちに語りかけた。
鎖の行進が、奴隷貿易禁止法成立の立役者とされるウィリアム・ウィルバーフォース議員の出身地のイングランド地方北部ハルを出発したのは今月1日。奴隷の中継地だったロンドンまでの約400キロを歩き続けた。
行進に参加したカリブ海・仏領マルティニク出身のモネット・タパ・ネコモウさん(43)は「黒い肌は隷属の印ではありません。我々が誇るべき歴史のあかしなのです」。子どもたちから拍手がわいた。
奴隷制への批判が高まる中、ブレア英首相は昨年11月、英紙に投稿し、「(奴隷制を)深く恥じる」と遺憾の意を表明。今月7日、訪英したガーナのクフォー大統領との共同記者会見で「改めて申し訳なかった」と謝罪した。
鎖の行進などの取り組みは、急速に広がる人身売買にも光を当てる。英内務省は03年、少なくとも外国人女性4000人が英国内の性産業に売り渡されたと推計。5年後のロンドン五輪が人身売買を加速させるとの懸念も出ている。
内務省は23日、暴力団などが仲介する売春や他の低賃金労働を「現代の奴隷制」と位置づけ、厳しく取り締まるための新たな行動計画をまとめた。