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2007年03月25日(日) 00時00分

被害23億か告訴へ 外為証拠金詐欺 東京新聞

 顧客から預かった証拠金を元手に、利益を狙う外為証拠金取引で高配当をうたい出資金を集めた「リベラインベスティメント」(東京都新宿区、破産手続き中)に現金をだまし取られたとして、投資家らが警視庁への告訴の準備を進めている。

 被害を訴えているのは高齢者や女性が中心。「(営業マンの姿に)自分の息子たちもこうして頑張って働いているのだと同情した」「何十年もかけて貯蓄した虎の子を、わずか四カ月で失ってしまった」−。彼女らの口々からは優しさや人の良さに乗じた勧誘の手口が浮かび上がる。

 二〇〇五年初夏。豊島区の六十代の女性は、自宅近くの喫茶店でリベラ社の営業マンと向かい合った。背広にネクタイをきちんと締めた四十代くらいの男は、「説明のため電車内で書いた」とかばんからB5判大の紙を取り出した。数式と「年利22%」の文字。女性は接客業が長く、人を見る目には自信があった。「息子よりちょっと上くらい」。男の丁寧な物言いに好印象を持った。

 きっかけは一カ月前の自宅への電話。「資料だけでも」と送られてきたが、為替の知識はない。捨てようとしたら、また電話。「会うだけなら」と応じた。一口五百万円と言われたが、そんなには出せない。「百万円からでもやってみませんか。お孫さんの小遣いになりますよ」と言われた。「孫のお祝い金くらいにもなる」と考え、投資を決めた。

 へそくりの貯金を崩し、結局、二回計二百万円を投資したが、配当は五千円だけ。リベラ社に電話すると、営業マンは夏休み中と言われた。結局、投資から四カ月後、管財人の弁護士からリベラ社破産を知らされた。

 「営業マンは上司から言われただけで、だますつもりはなかったはず。会社は最初から破産するつもりで、金を集めたのではないか」。信用と不信が入り交じった。

 昨年十月、一部の投資家が債権者の会をつくった。同会がまとめたところ、北海道と沖縄を除く全国約四百四十人が投資、その合計額は二十三億円に上った。

 老後の資金を失った投資家らの悲痛な声も同会に寄せられている。「営業マンは『高校の後輩だ』と言っていた」「八十三年、生きてきたが失望感と自分の至らなさを悔いている」−。

 外為証拠金取引をめぐっては、お年寄りを狙った悪質な勧誘が社会問題化し、〇五年七月以降は改正金融先物取引法で、電話勧誘の禁止や、金融庁への登録が義務化されるなど規制が強化された。金融庁によると、悪質勧誘や債務超過で行政処分を受けた業者は、同月からの半年でリベラ社を含む約六十社に上った。

 法の網がかかるようになったが、警視庁には、外為取引についての相談は今もあるという。 (大野孝志)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070325/mng_____sya_____007.shtml