今回の統一地方選に立候補する新顔の中には、20代の若手も少なくない。政治や故郷の街への思い入れから会社員を辞め、地方議会をめざす人もいる。
豊中市、阪急蛍池駅前の賃貸ビル。4月の市議選に新顔で立つ予定の松岡信道さん(26)の事務所は、正面がガラス張りで通りから丸見えになっている。
「議員がどこで何をしているのか、仕事の中身が見えない印象がある。市民に少しでも身近に感じてもらえる存在になりたい」
政治への関心は、政治学を専攻した大学時代からあった。現場を知ろうと、近くの市の市長や市議のインターンシップに応募。数週間〜数カ月ついて歩き、支持者の家を回って頭を下げ、街頭演説で支持を呼びかける経験もした。選挙のたびに落選を意識する厳しい世界に触れ、「自分に政治家はとても無理」と、いったんはあきらめた。
大卒後の2年前、府内の金融機関に就職した。中小企業への融資などを担当し、やりがいも感じていた。だが、社会人になり、生まれ育った街を見つめ直すと、市政のあり方に疑問が出てきた。ニュータウンは高齢化が進み、結婚した同世代はむしろ街を出て行く。「民間企業なら顧客の要望を聞く営業職がいるが、議会は市民の思いをくみ取っているのか」
友人に相談すると、「一度選挙に出てみれば」と背中を押された。昨年12月に退職し、立候補の準備を始めた。選挙資金は自分の貯金だけ。手伝いをかって出てくれた友人らの支援が頼みだ。
■ ■
「市議候補として出るため退職します」。八尾市の文岩龍郎さん(27)は2月末、3年近く勤めたパソコン保守会社に退職届を出した。立候補は、その1カ月前に決めていた。選挙に出ると明記することで「後戻りはしない」という思いを込めた。
政治に興味を抱いたのは高校生のころ。同級生と放課後、日韓、日中関係といった外交問題から、同和問題など人権や地域のあり方まで語り合うようになった。大学では、政治の成り立ちや仕組みを学ぶ講義を受けた。就職後も「いつか、政治家になる機会があれば……」との思いがあったという。
今年1月下旬。地元の保守系市議が引退を決めたと聞いた。生まれ育った市内では最近、生活苦でヤミ金融に追い詰められたお年寄りが命を絶つ事件が起きたり、市の財政難で福祉施策の先行きに不安を抱いたりする声も耳にする。「いまの行政や議会は市民の目線に立っているのか」
学生時代から温めていた気持ちを生かし、市議を目指す決心をした。支援の中心は、家族のほか、中学、高校時代の同級生ら身近な人が頼みだ。選挙公報などの文案も自分で考える「手作り選挙」で挑戦する。「行政と市民を結ぶ本当のパイプ役を目指したい」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
府内の新顔の予定候補者数
前半の府議選と大阪、堺両市議選、後半の17市議選と4町議選で、総定数712に対し、23日現在で朝日新聞社に立候補の意向を明らかにしたのは1千人余で、うち新顔は350人を超す。このうち、市町議選の新顔は約270人。20代は約20人、30代は約50人。20代〜30代が最も多いのは大阪市で10人。豊中、高槻両市が9人、枚方市8人、堺市7人と続く。最年少は26歳で、男女5人となっている。
http://mytown.asahi.com/osaka/news.php?k_id=28000000703240001