●観光・経済振興 両候補に聞く(上)
15年半ぶりに県政の新リーダーが誕生する4月8日投開票の知事選は、県政を見直す大きなチャンス。ともに無所属新顔で立候補した西ふみ子氏(71)=共産推薦=と、荒井正吾氏(62)=自民、公明推薦=に「平城遷都1300年記念事業」や経済・観光など、奈良の活性化策について聞いた。
◎最低賃金増へ 国に提言 /西ふみ子氏
——平城遷都1300年記念事業の中止を訴えています
一時的に観光客を呼ぶための祭りに過ぎない。もう一つの狙いは愛国心を植え付けることではないでしょうか。「日本は神の国」だと言った(平城遷都1300年記念事業推進議員連盟の会長を務める)森喜朗元首相も平城宮跡の視察に来ています。事業に300億円もかけるのは無駄。貴重な文化遺産である平城宮跡を踏み荒らして会場を造るのも許せない。
——観光施策として「公共交通機関と徒歩で巡る観光ルートの創出」を訴えていますが、実現できますか
沿線に観光資源があるJR桜井線や近鉄吉野線を複線化し、列車の本数を増やせば集客できます。あとはバス。私のように自動車免許を持っていない者は、そういうものを活用したい。JRも近鉄も世論がまとまれば、放っておけないでしょう。
——宿泊施設の整備も訴えています
大きなホテルを呼ぶわけではありません。31歳の娘といっしょに旅行雑誌を見ることがありますが、九州の黒川温泉や由布院にあるような若い女性が行きたくなる魅力のある宿が奈良にできればいい。老舗(しにせ)ホテルも、戦後に建てられた修学旅行向けの旅館も、魅力的に変わるよう援助したい。
——公約通り大型商業施設の出店を抑制すれば、雇用の場の確保に不利なのでは
大型店が来ると商店街はガタガタになります。私の地元の生駒市は近鉄百貨店が進出したことで商店街が衰退しています。若者の流出は、都道府県ごとの最低賃金が奈良は低いからです。これを上げるよう国に対して発言します。企業には正規雇用を増やすよう求めていきます。
県庁職員や教員などでも、非正規雇用の若い人が目立つ。30人学級を実現するなどして雇用の枠を広げます。
——経済発展について、どんなビジョンを持っていますか
その時々の知事のもとで訂正していくビジョンはいくらつくっても無駄。企業誘致はやってもいいですが、県内の産業の大きな柱は林業や農業です。これをいかに発展させるかです。
◎企業誘致 迅速性を重視 /荒井正吾氏
——政策提言集で、1300年記念事業について無駄を省いて節約すると公約しています
文化庁とともに会場の平城宮跡を国営公園として整備することで、国の予算を呼べます。花壇や駐車場、トイレなども後に残る形で整備します。一方、事業のイベントは一過性のものですので、必要ならば見直します。国と話をつければ、新年度に県の調査費で国営公園化の「絵を描く」作業はでき、開催予定の2010年に間に合います。
——企業からの協賛金が集まっていません
企業からは「事業計画をはっきりしてもらわないと困る」と言われました。CSR(企業の社会的責任)の観点から、企業がお金を出しても意味がある形にしなければ。文化的素養のある人を集め、成功させる知恵と工夫を出してもらう。
——年間約300万人の宿泊観光客数を4年以内に倍増させる公約です
京都・大阪に泊まって奈良観光をしていた客に、県内に泊まってもらえるようになれば達成できます。(宿泊施設の)キャパシティーさえあれば可能です。奈良市の旧市街に高いビルを建てると若草山や大仏殿の眺望が損なわれますが、少し離れた西大寺やあやめ池、大和郡山市などが施設の候補地です。
——知事のトップセールスを重視されています
県財政のためには、経済の活性化による税収増加が大切です。景気が回復する中、都道府県の差が出てきています。シャープの液晶テレビの工場を三重県が誘致できたのは多額の補助金を出したからといわれますが、大切なのは補助金じゃなくて迅速性なんです。
例えば手続きが2年間もかかるとその間に液晶の値段が下がってしまう。私がトップセールスを強調するのは迅速性を重視するからです。
——そういう戦略が柿本県政に足りなかったということですか
今の県政を見て政策提言を書いたのではありません。ただ、提言に「目標は4年で100件」と盛り込んだ企業誘致の件数は、過去4年間で32件なんです。同じ期間に滋賀は100件ほど。奈良もがんばればできるんじゃないかな。南阪奈、京奈和、名阪と道路もありますから。
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000000703240002