「住民投票で民意は確実に反映される。この条例を制定する必要はない」。東洋町の田嶋裕起町長は22日の臨時議会の本会議で、放射性廃棄物の持ち込みや処分場の建設・調査を拒否する条例案を、反対意見を付けて提案した。同町が高レベル放射性廃棄物最終処分場の調査候補地に応募したことに対し、住民が直接請求した同条例案は同日可決されたが、田嶋町長が再議権を行使する可能性もあり、制定される見通しは立たない。田嶋町長のリコール(解職請求)運動も進む東洋町の混迷は深まっていく。 (岡見理沙、川原崎茂)
この日開かれた臨時議会で、条例案を提出した田嶋町長は、「文献調査は町民に対して何ら具体的な影響をもたらすものではない。この条例は中立的な議論をも封殺するものであり制定は望ましくない」と反対意見を述べ、応募が施設を「誘致したものではない」ことを強調、住民の意思は住民投票で確実に反映されるとした。
住民投票に関して奥村富信町議が「田嶋町長が文献と概要調査が終わった6年後に実施するという住民投票の時期を、文献調査が終わった2年後にするのが望ましいと思うが」と質問したのに対し、田嶋町長は「文献調査後に住民投票を実施してもいいのではないか」と答え、2年後に実施する考えを示した。
条例案は賛成5、反対4で可決されたが、田嶋町長が再議を求めた場合、再び可決されて条例が制定される可能性は低い。
条例案を直接請求した住民団体の代表、弘田祐一さん(69)=同町生見=は「条例の制定は当然のこと。町長は再議にかけず条例を通して欲しい。交付金を使わない行政をするべきだ」と話した。
また、賛成派の住民有志でつくる「東洋町の明日を考える会」の事務局長で同町商工会長の西岡尚宏さん(49)は「文献調査の終わる2年後に、住民投票を考えてもいいなど、反対派住民に歩み寄るような発言が出てきており、町を二分するようなことは避けようとする町長の意思が見て取れ、評価できるのでは」と話した。
この日の臨時議会では、田島毅三夫町議が常設型の住民投票条例案を提案。賛成5、反対4で可決された。
議会後、田嶋町長は再議権を行使するかどうかについて「今はまだ決めていない。もう少し落ち着いて精査して決めたい」と述べた。また、奥村町議は「町長が2年後の住民投票を確約したととらえている」と話した。
放射性廃棄物の持ち込みや処分場の建設・調査を拒否する条例案の可決について、原子力発電環境整備機構立地広報部広報グループの山田雄一郎課長は朝日新聞の取材に対し「町から応募の取り下げがない限り方針に変更はない。ただ、こういう条例ができたということはご理解いただけていない部分があるということ。最終処分場の必要性、安全性をご理解いただけるよう、なお一層の努力をしていきたい」と話した。
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●再議権
地方自治法で、首長が予算や条例にかかわる議会の議決に異議がある場合に、審議のやり直しを求められる権利。議長から条例または予算の送付(議決の日から3日以内)を受けてから10日以内に議会を招集し、再議を要求する。再議での条例案の可決には、議長も含め出席議員の3分の2以上の賛成が必要となる。
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