第二小法廷は「代理出産は公知の事実で、(明治時代に制定された)民法の想定していない事態だ」と指摘。「遺伝的なつながりのある子を持ちたいという真摯(しんし)な希望と、他の女性に出産を依頼することについての社会一般の倫理的感情を踏まえ、立法による速やかな対応が強く望まれる」と述べて、法整備を急ぐよう国会に異例の注文をつけた。
夫妻は双子の出生後、米国ネバダ州の裁判所で親子関係を確定する判断を得ていた。昨年9月の東京高裁決定は、外国裁判所の確定判決の効力が承認されるとした民事訴訟法の規定をもとに、親子関係を認めた。
これに対し、第二小法廷は「実親子関係は身分関係の中で最も基本的なもの。基準は一義的に明確でなければならない」と指摘。「民法が定める場合に限って実親子関係を認める」と厳格な解釈を示した。
その上で、今の日本の民法では認められないのに、実の親子関係を認めたネバダ州裁判所の判断は「我が国の法秩序の基本原則、基本理念と相いれず、公の秩序に反する」と述べ、東京都品川区に出生届を受理するよう命じた東京高裁決定を覆した。4裁判官全員一致の結論だった。
向井さんは00年に子宮摘出手術を受けた。高田さんとの受精卵を米国人女性に移植し、出産してもらう代理出産で、03年に双子が誕生。品川区は法務省の意向も踏まえ双子の出生届を受理しなかった。双子は現在、米国籍で、在留資格を取って日本で暮らしている。
夫妻は処分取り消しを東京家裁に申し立てたが05年11月に却下され即時抗告。06年9月の東京高裁決定は一審の審判を取り消して、出生届の受理を命じた。その後、決定を不服とした品川区が最高裁に抗告していた。
http://www.asahi.com/national/update/0323/TKY200703230261.html