「過去75年間で最低の税率だ」。ブラウン財務相は下院で21日、所得税の基本税率を08年4月に22%から20%に減税する方針を発表し、野党第1党の保守党の増税批判をかわした。97年のブレア政権発足以来、好調な経済を支えてきたブラウン氏が「最後の予算」に忍ばせた隠し球は、総選挙の行方を左右する無党派層に訴える減税だった。
予算案では、法人税も08年4月から2ポイント減税。同時に児童手当の引き上げなども盛り込んだ。
目配りの利いた予算案の背景には、支持率の低迷がある。20日付のICM社の世論調査によると、労働党の支持率は31%。キャメロン党首の下で攻勢を強める保守党を10ポイント下回った。ブラウン政権下で総選挙が行われる場合、支持率は28%とさらに低迷し、保守党に15ポイントの差を付けられた。
それでも、労働党の次期党首選でブラウン氏に挑戦する意向を明言しているのは、左派のミーチャー元環境相とマクドネル議員の2人だけ。若手有力株が出馬しない限り、ブラウン氏の当選は確実な情勢だ。
英紙によると、ブレア首相は5月3日の地方選挙直後に辞意を正式に表明し、6月25日にブラウン氏に政権を移譲する方向で調整が進められている。