独特の感性で人気のラッパー、MCスナイパー
2002年にデビュー、「BKラブ」「歌を訪ねる人々」をリメークした「松よ松よ青い松よ」「韓国人」などを発表した彼は、第4集「ハウ・バッド・トゥ・ユー・ウォント・イット」では「アウトロー」、または「ヒップホップ界の一人ぼっち」を自称する。
「重要なのは精神だと思います。どれだけ多くの人と共感を得られるかがカギです。音楽は私の魂を表現する方法であるだけ…」
2004年に映画「ラストエンペラー」の音楽を担当した坂本龍一のシングルアルバム「undercooled」に客員ラッパーとして日本で参加した。そこで在日韓国人と留学生たちから「あなたの音楽からパワーをもらいました」という内容の手紙を寄せられ、「同胞」「血」といったことについて深く考えさせられたという。
「3年間どう過ごしていたかですって? アルバムの収録曲を見てください。「昼には(軍服務に代わる)共益生活をし/夜は録音スタジオで第3集の契約を終わらせて/イベントで稼いだお金で第1集の資金回収をし…」の歌詞のように、共益勤務とラップデュオ「ペチギ」のプロデューサーとして活動していました」
松任谷由実の1994年のヒット曲「春よ来い」をサンプリングしたタイトル曲「ポミヨ オラ」(春よ、来い)は、おぼろげな愛の不安感を吟じた曲。また人生を戦場にたとえた「地図の外への行軍」や、レコード店を経営していた父との幼い思い出をつづった「我が家」なども収録されている。
「30を前にして本当のラップができるようになったようです。熱い胸を抱えて自分は何者なのか、また自分が属するこの国はどんな存在なのか、果てしなく悩みました」
「次のアルバムが最後になるかもしれない」と、ふと語ったMCスナイパー。音楽がダメなら地方でビヤホールを経営して文章だけ書いて暮らすという。ミリオンセラーなど考えない。
「正統ヒップホップ、疑似ヒップホップなどということ自体が今では無意味です。誰がもっといい音楽を発表するのかが、より重要でしょう。どんな音楽であっても真実を表現すること。それが正解ではないでしょうか」