クリスチャン・ディオール=いずれも大原広和氏撮影
フェンディ
ジョルジオ・アルマーニ
ミュウミュウ
アンダーカバー
ミラノでは、グッチのマニッシュなコートなど「強い女性」を表現したブランドが目についた。といっても男性と肩を並べる強さだけではない。セクシーさや可愛らしさをも積極的に楽しむ女性のイメージといえばいいだろうか。
フェンディは、ゴージャスな毛皮コートを、ミニ丈でカラフルに仕上げ若々しく快活なアイテムに変えた。ジョルジオ・アルマーニはミニドレス中心で、足元はヒールのない靴。ゆったり歩くモデルの姿に女性像の変化が感じられた。
パリでは、黒などダークな色調が主流。その中にロマンチックな美しさを表現する傾向が目立った。
ヨウジヤマモトは、ビスチエドレスにメンズのパンツや大ぶりのコート、スカートを重ねて、セクシーさを隠しつつ強調。ジュンヤ・ワタナベは革ジャンに小花柄のドレスを合わせ、強さと可愛さを共存させた。ドレスとカーディガンをはぎ合わせてねじれたような形に再構築する試みも。
異彩を放ったのがクリスチャン・ディオール。1月のオートクチュールに引き続いて、日本の着物や折り紙に着想した造形をプレタポルテに落とし込んだ。グリーンやオレンジ、紫などロマンチックな色調のドレス約60体が並ぶフィナーレは圧巻だった。
服の形は今季もクラシックな傾向がめだった。Aラインやエッグシェイプ(卵型)に、80年代的なボリュームのある形が交じる。ウールとニットなど異素材を組み合わせたり、部分的にボリュームを変化させたりすることで、モダンなシルエットを演出していた。
その際によく使われた素材が毛皮。えりや袖口、すそなどにあしらうことで、軽快でゴージャスな雰囲気をもたらすからだろう。数ある素材の一つとしてすっかり定着したようだ。
ステラ・マッカートニーはニット中心のコレクション。大ぶりのニットの下にシルクのドレスを合わせるなど、フェミニンでくつろいだスタイルを見せた。アンダーカバーも今季はニットが多かった。保温機能などを備えたハイテク素材と組み合わせて、ストリートのエレガンスを表現した。
ツモリ・チサトは20年代上海をイメージして、光沢感のあるシルクドレスなどを発表。ユキ・トリイは黒を基調にしたミニドレスをシックにまとめた。
パリ・コレクションを締めくくったのはミラノ発のミュウミュウ。ベージュやピンクの淡い色調から官能的な雰囲気がにじむ。ジャケットやバルーンスカートのフォルムは特殊な裏地で構築し、50年代風だが軽やかな生地はシルクとナイロン混紡。素材や技術の力がファッションを前進させることを示した。