「原子力の安全確保に関する透明性と信頼の確保について」と題する緊急声明は、白書の閣議報告を前に、19日にまとめたもの。不都合なデータやトラブル・事故を隠すことは「過誤や異常を経験するごとに得られた教訓を集積し、安全確保に関する知恵を充実していくことへの参加拒否」と断じ、「国民の信頼を揺るがす」と批判した。
その上で、(1)経営者が安全を最優先し、必要十分な経営資源や注意力を配分するという経営方針を組織の隅々まで浸透させる(2)安全確保のための活動について品質管理システムを機能させ、過誤や異常事象が発生した際は抜本的対策を講じるとともに、教訓を世界の関係者と共有する(3)安全確保について国民や地域社会に対する説明責任を十分に果たす——の3点が必要と指摘。電力会社の反省と、国による点検を求めた。
白書本体は今回初めて、原発を地球温暖化問題の解決に貢献する中核的手段の一つとして位置づけ、冒頭に一節を設けてまとめた。2030年には世界のエネルギー需要が現在の1.5倍に増えると予測。原発は石油火力発電に比べ、温室効果ガスの排出が30分の1に抑えられると強調する一方、風力などの新エネルギーは供給安定などに課題があるとする。
原発が地球温暖化対策に貢献するためには、安全で安定した運転のほか、高レベル放射性廃棄物処分場の立地の推進、核不拡散体制の強化に向けた国際社会への働きかけなどを進めていくべきだとしている。
しかし、昨年来相次いで発覚した不祥事については、足元の安全と信頼の確保にかかわるのに、具体的記述がない。原発の新増設が進まない背景として「国民の信頼を損なう問題が発生した」などとあるだけだった。
http://www.asahi.com/national/update/0320/TKY200703200127.html