市場化テストの流れ
求人開拓事業は、昨年9月に決まった市場化テストで第1弾とされた5分野9事業の一つ。雇用情勢が厳しい地域で企業を回って求人を開拓する事業で、厚労省は北海道旭川市周辺、青森市周辺、高知市周辺、福岡県飯塚市周辺、長崎県佐世保市周辺の5地域について民間企業に開放する方針を決定。民間企業だけの「民民入札」を19日までに2度実施した。
ところが、高知、長崎の2地域では応札企業がゼロ。北海道では応札はあったものの、厚労省が国の実績をもとに算出した予定価格の範囲に収まらなかったため、決まらなかった。
05年度から実施しているモデル事業では、国と比べて民間企業が求人開拓実績をあげるのに苦戦している。そのため落札しても費用がかさんで利益が出にくいと判断し、企業側が今回の応札を見送ったとみられる。
入札の実施要項の規定で、2度の入札でも落札企業が決まらない場合は国、つまり各地域のハローワークが事業を担うことになる。
問題は予算だ。新年度予算では、この事業に必要な経費が民間企業への「委託費」として計上されている。だがハローワークが実施する場合は地元企業OBなどが担う求人開拓推進員への「謝金」となるため、予算の振り替えはできないという。厚労省は「緊急性の高い事業であり、監理委員会と相談のうえ早急に対応を検討したい」(首席職業指導官室)としているものの、4月の事業開始は目前に迫る。
民間企業の参入を前提に市場化テストを推進してきた監理委員会にとっても想定外の事態で、今後の対象事業選定にも微妙な影響を与えそうだ。